SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

注目の経営書の著者と語る

人材不足と余剰を同時に解決する「スキルベース組織」──経営企画・人事・財務の“三位一体改革”とは

ゲスト:EY Asia East / Japan ピープル・コンサルティング リーダー 鵜澤慎一郎氏

  • Facebook
  • X

「職務経歴書×AIサジェスト」で実現するスキル可視化

栗原:スキルベース組織の実現にはスキルの可視化が不可欠ですが、定性的なスキルのデータ化はハードルが高いと感じます。

鵜澤:可視化には、会社側の「仕事の見える化」と従業員側の「保有スキルの見える化」の2側面があります。

 会社側は仕事を要素分解し、「AIか、アウトソースか、人間か」を整理し、人間に必要なスキルを定義します。これは今ならAI活用で比較的容易です。米国の「O*NET(オーネット)[2]や欧州の「ESCO(エスコ)[3]といった公的なデータベースには標準的なスキル定義が網羅されており、これをAIに読み込ませれば、自社定義の叩き台はすぐに作成できます。

栗原:従業員のスキル可視化はいかがでしょうか。自己申告だけでは客観性に欠ける懸念があります。

鵜澤:全社員のゼロからの入力は手間がかかり、データも陳腐化しやすいため、テクノロジーでスキルを「推論」するアプローチが進んでいます。職務経歴書や評価データをAIに読み込ませ、「あなたの経歴ならこのスキルを持っていますね」とサジェストし、本人がチェックする形なら負荷を最小限に抑えられます。

 こうして可視化されるスキルは、市場価値を持つ「通貨(Currency)」になります。マーサーなどが提唱[4]するように、スキルは交換可能な資産です。「社内評価と市場価値のギャップ」が可視化されることは企業にとって脅威かもしれませんが、労働市場全体では健全なことです。属性ではなく、後天的な「スキル」が評価される社会は、よりフェアでダイナミックなものになります。

経営企画・人事・財務のための「共通言語」へ

栗原:最後に、スキルベース組織への変革に取り組むリーダーへメッセージをお願いします。

鵜澤:重要なのは、自社だけで抱え込まず、外部知見やデータを積極的に活用することです。「自社固有のスキル」にこだわると定義だけで数年を費やし失敗します。たとえば自動車製造の基本スキルには多くの共通項があるはずです。汎用的なデータベースやプラットフォームを活用し、スピーディーに進めるべきです。

 そして、経営企画・人事・財務が連携すること。経営企画が描いた「5年後の事業構造」に対し、人事が「必要なスキルと人員配置」を具体化し、財務が「投資対効果」を検証する。このサイクルを、戦艦大和のように重厚長大に進めるのではなく、小型ボートのように高速でピボット(方向転換)しながら回していくことが重要です。その共通言語として「スキル」を活用することが、日本企業の再成長には不可欠だと確信しています。

栗原:本日は、スキルベース組織をテーマに経営企画、人事、財務などのコーポレート機能の変容までを解説いただき、ありがとうございました。

鵜澤慎一郎

[2]O*NET(Occupational Information Network):米国労働省雇用訓練局が1998年に開設した職業情報の総合サイト

[3]ESCO(European Skills, Competences, Qualifications and Occupations):欧州委員会が運営する、職業、技能(スキル)、コンピテンス(能力)、資格・学位を欧州共通の多言語で分類・整理したデータベースとポータルサイト

[4]Ravin Jesuthasan & John Boudreau『Work without Jobs』(The MIT Press、2022年)

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
注目の経営書の著者と語る連載記事一覧
この記事の著者

栗原 茂(Biz/Zine編集部)(クリハラ シゲル)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

  • Facebook
  • X

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング