欧州・アジア市場と日本の決定的な「温度差」
後半のパネルディスカッションでは、日本企業で働く欧米人と欧米企業で働く日本人、そして国内外を取材するジャーナリストという、海外市場の動向に精通する3名が登壇。日本との決定的な「温度差」について語り合った。
オンラインで参加したジャーナリストの川端由美氏によると、取材先のポルトガルや隣国スペインでは、新車販売におけるEVの割合が20〜25%に達しており、ドイツでも「4台に1台がEV」という環境が定着しつつあるという。欧州では社会インフラの課題を認識しつつも、業界全体で「100%EV」という強い号令をかけることで変革を推進しているのが実態だ。
一方、東南アジア市場の動向について、シェフラージャパンの田中昌一氏は「中国車の躍進が著しい」と語る。BYDなどに代表される中国勢は、市場ごとに適正な価格を見極め、巧みなマーケティングを展開している。さらに、東南アジアの若年層に対し、単なる「走る・曲がる・止まる」という車の基本性能ではなく、スマートフォンの延長線上にあるような新たな体験価値を提供することで心を掴んでいるという。「壊れないがおもしろくない」と評されがちな日本車が、このパラダイムシフトの中でいかに存在感を示していくのか、厳しい現実が突きつけられた。
EV・自動運転時代のハードウェア生存戦略
ソフトウェアやAIが主役となるEV・自動運転時代において、既存の自動車部品メーカーはどう生き残るのか。
ジェイテクトのRobert FUCHS(ロバート・フックス)氏は、自動運転が普及したとしても「いつでも、どこでも、誰でも完全に任せられるようになるには時間がかかる」と指摘。万が一のシステム故障時のバックアップや安全性の担保という観点から、ステアリング技術がすぐに不要になることはないと語った。
また、田中氏も、トヨタ自動車が掲げる「マルチパスウェイ」戦略への共感を示す。世界中には様々なエネルギー事情や顧客ニーズがあり、完全EV化といった一つの正解だけで全市場をカバーすることは不可能だからだ。ハイブリッド車一つをとっても、複雑なトランスミッションには多数のベアリングが必要とされる。「自動運転になろうが人が運転しようが、ある程度の速度で走る以上、ボディ剛性やレイアウトといった物理的なハードウェアの重要性は無視できない」と田中氏は強調する。ソフトウェアの進化を支える確固たる基盤として、日本の部品メーカーが培ってきた高度なハードウェア技術には、まだまだ多くのビジネスチャンスが残されているようだ。
