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「二度と説明に来るな」に込められた真意──JR東日本に学ぶ、外部連携を成功させる出島戦略【書籍抜粋】

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トップから言われた「二度と説明に来るな」の真意

──そもそもなぜ出島として出る必要があったんですか?

柴田 先ほども話しましたが、スタートアップ企業っていうのは、大企業にとってみるといろんな面で、もう完全にエイリアンなんですよ。時間軸も違えば、文化も考え方も違うので、わかり合えないですれ違いやハレーションが起きるばかり。なので、完全にスタートアップ企業と一緒にコミュニケーション取って事業を作る母体として、エンティティ(実体)をもう完全に出島として作る必要があった、っていうのが、出た理由ですね。

──それで、やりましょう!って言ったと。

柴田 いえ、最初に言ったのは、実は若手なんですよ。スタートアップ企業と連携したいっていう、JRのまさに本土の若手の発案が、結構前にあって。ただ何回かつぶされてるんです。その後、JR東日本グループが中期計画を作るタイミングで、はじめてオープンイノベーションっていう言葉が、たまたま大きな柱になった時があったんですね。

 人口減少が、鉄道事業に直撃する。今まではオペレーショナル・エクセレンスを追求してればよかったかもしれないけど、これから日本に来る未来ってのはとんでもない未来。僕らドメスティック企業ですから、今まで通りにやってたら衰退するのが、完全に目に見えてて。中計の議論で「会社作ろう」ってなった時に、僕が経営企画的なセクションでたまたまその担当だった。いい流れだなって思ったんで、先ほどの若手の案を「今ならいけんじゃね?」と、いろいろ説明したら、じゃあお前ら出島作って本気でやれ、と、やんちゃが通った感じです。

──そのトップの方々とは、どう連携されてるんですか。報告とか。

柴田 別に報告に行ってもいいんですけど、本当にしないんですよ。裁量を得て、自由にやるっていうのが、この出島のまさに特区の魅力であり、強みであって。第一号のスタートアップ企業との連携案件だけ、事前説明に行ったんですね。「よろしいでしょうか」と。その時のトップが「うん、わかった」と。やれと。「ただし、二度と説明に来るな」って。説明に来るヒマあったら仕事しろと。それから1回も行ってないです。

──ドラマみたいなカッコいいセリフ。

柴田 はい。トップマネジメントのサポートはとても重要です。こういう新しいことって、会社の中間層的にはめんどくさいことなんですけど、経営層は社内に揺らぎを与えたいわけです。会社設立の時も、いろんな会議体で、たくさん免責条項つけられてだんだん資料が分厚くなってたんですけど、最後の最後トップに持っていったら、もう何やってんだお前と。いいから早くやれと。だから、すごい中途半端な日なんすけど、2月20日が設立日なんですよ。4月1日とかじゃなくて。

JR東日本スタートアップの出島組織図
JR東日本のCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)としての出島組織。JR東日本が持つインフラをスタートアップに開放、出資し、共創。未だかつてない新しいサービスを量産している。

1,000を超えるビジネスチャンスの創出:新幹線で鮮魚を運ぶ

──では、どんな成果が上がっているのか、お伺いしたいです。

柴田 設立時からやっている「JR東日本スタートアッププログラム」っていうアクセラレーション・プログラム。ここに5年間で1077、つまり毎年200ぐらい外国船、スタートアップ企業がやってきてくれています。この出島ができる前は、多分近づいても大砲で打ち落としたと思うんですよね。

 新たなビジネスチャンスが、少なくとも1000を超えるぐらい生まれているっていうのが、数字としての成果。せっかくうちはリアルなインフラを持ってるので、採択した企業には、僕らが持ってるインフラを開放するってお約束してるんですね。紙で終わらせない。必ずそこで事業の種を作り、年度内に実証実験をやります。

 駅蕎麦ロボットも東京で生まれていますし、新幹線で三陸とか佐渡で朝獲れた魚を運んじゃおうみたいな、こととか。僕らがやりたいのは、スタートアップ企業とJRがコラボするからこそできる、そういう新規事業です。

──今までの中で、一番の自信作は?

柴田 その鮮魚を新幹線で運んじゃおう、というやつ。一番最初に苦労したから。やってみたら、大変だったんですね。「新幹線は魚運ぶもんじゃない」とか「臭くなったらどうすんだ」とか「置く場所ねぇ」とか、いっぱい言われるんですけど、「今、車内販売撤退してますよね。その場所空いてますよね」とか一緒に知恵出して、工夫して。

 それでなんとかなって、第一便が運ばれてきた。そして駅ナカで売ったら、あっという間に売れたんですね。「あ、マーケットあるんだ」と、やってみて気づく。新幹線で運ぶから高いんですけどね。その時、6日間しかやらせてもらえなかったけれど、ここで結果が出たんで、今はJR東日本本体が「はこビュン」という事業として、毎週鮮魚を運んでいます。

 無人駅グランピングなんかも、同じです。「40日間、2つだけ試しにやらせてください! 誰も来なかったら撤去して、さら地にしてお返ししますから」と言って。でも人がいっぱい来て、結果が出た。「無人駅とグランピング」とか「新 幹線と鮮魚」とか「駅蕎麦とロボット」とか全部「混ぜるな危険」。でもうまくいけば、橋渡し役としては「よっしゃ、やったぜ」ってなりますよね。それ以上に涙の数も多いですけどね。

 まずやってみるってのが、大企業はなかなかできないんですよ。新規事業の成否を決めるのって、本社の会議室のナントカ部長じゃなくて、お客様。やってみると、お客様にニーズがあるのがわかる。出してみないと絶対にわからない。僕らが失敗してもいいんです。出島は失敗を代行できる。新規事業の研究開発ですね。

JR東日本スタートアップ×フーディソンの実証実験
宮古市や佐渡市で獲れた海産物を新幹線を使って東京都内に輸送し、品川駅構内で販売する、JR東日本スタートアップ×フーディソンの実証実験。

出島の成否を決める2つのルール

──ここの出島には独自の方針とかあるんですか?

柴田 うちはルールが2つあって。まず「できない」をNGワードにしてます。鉄道業界長いんでわかるんですが、基本新しいことやらないっていう思考回路になりがちなんですよ。できない理由を言わせたら、5分あったら100個言えます。でも、うちのメンバーにはこの出島に来た途端、やめろと。

 あと、もう1つ「黄色い線の内側でやんちゃしよう」と。鉄道は人命を預かるので、越えてはいけない線があるんですね。スタートアップ企業のみなさんもね、ちょっと目を離すと越えようとしてるんですけど。いや、ちょっとそこは待ってくれと。やんちゃはしていいんだ、ただし、黄色線の内側でね、と。

──言い方がチャーミングだから、従わざるを得ないですね。うまいなあ。最後に、今後の展望をぜひ。

柴田 出島が出島じゃなくなるといいなって思ってるんですね。この特区が本土の中に入る。本土が開国したらやれること、山のようにあるんですよね。JRの新規事業って、社会課題解決、社会を変えることにつながるので。世の中にも、スタートアップ企業にとってもプラス。若手もやりがいがあってね、大企業おもしろいって言って。みんなの目が輝いてほしいんですよ。

出島組織というやり方 はみ出して、新しい価値を生む

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出島組織というやり方 はみ出して、新しい価値を生む

著:倉成 英俊、著:鳥巣 智行、著:中村 直史
発売日:2024年02月21日(水)
定価:1,980円(本体1,800円+税10%)

本書について

ハウス食品、JR東日本スタートアップ、ONE、みんなの銀行、東京都庁、北海道大学、パーソルキャリアなど出島組織の成果を本体組織へうまく還元した20のチームが教える日本初の変革のヒント集です。

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この記事の著者

大久保 遥(Biz/Zine編集部)(オオクボ ハルカ)

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