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イトーキが挑む、人的資本経営時代のオフィス投資の最適解──AI活用による可視化と可変型オフィスとは

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個の自律から「チーム運用」への進化

 時系列のデータ分析からは、企業の経営フェーズの変化に伴う、従業員の行動変容が生々しく浮かび上がった。

 2023年時点では、個人のPC環境や大型ディスプレイが整ったオフィスの「外周部(ソロワーク席)」にいる従業員の能力発揮度が高かった。これはコロナ禍直後の「自立した個の裁量」を重視するABW(Activity Based Working:時間と場所を自由に選択する働き方)の思想に合致している。

 しかし、2025年を境にその傾向は激変する。基幹システムの刷新や全社的なデータドリブン経営、AI活用の浸透に伴い、あらゆる部門で「過去の延長線上ではない、働き方の見直し」が必須となったのだ。その結果、能力発揮度が高い従業員の滞在エリアは、オフィス中央の「人と話しやすい交流スペース(1on1やミーティング席)」へと完全に移行していた。

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 「データが示したのは、現在の激変するビジネス環境において成果を出すためには、1人で黙々と働くよりも、チームで時間と場を共有する『チームコワーク』のほうが圧倒的に有効であるという事実でした」と八木氏は解説する。

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 実際に、チームコワークスペースを1年間積極的に利用した部署は、組織全体の平均値と比較して「心理的安全性」や「コミュニケーション」に関するスコアが軒並み上昇し、能力発揮度の向上に直結していることが証明された。

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五感に訴える空間デザインがデータの価値を左右する

 データによって「チームコワークの重要性」という設計要件が導き出されたが、清水氏は「チームワークが大事というのは一見凡庸な結論にも思えるが、その解像度をどう上げるのか」と切り込んだ。

 これに対し八木氏は、先行して実施した部分改修の失敗データを提示。同じチーム用デスクを配置した4つのエリアのうち1ヵ所だけ、全く機能せず、能力発揮度に寄与しなかったエリアが存在したことを明かした。原因は空間の「しつらえ(デザイン)」にあった。周囲の視線や音のコントロールが不十分で、ハードウェアとしてはチーム用であっても、心理的には短時間のソロワーク(タッチダウン)にしか使えない環境になっていたのだ。

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 「データで『チームが大事』と席数を決めるだけではオフィスは失敗する。周囲の視線、音、明るさといった五感に関わるデザインと組み合わせて初めて、スペースは真の価値を発揮する」という八木氏の指摘を受け、香山氏による具体的な空間デザインへの落とし込みが紹介された。

「日本橋の歴史」を内包した3軸ゾーニング

 香山氏は、リニューアルした12階のフロアに、本社の所在地である「日本橋」の歴史的文脈を編み込んだ。日本橋は、五街道の起点として人・モノ・情報が行き交い、新しい価値が生まれた“結節点”である。この歴史になぞらえ、フロア全体をダイナミックな3本のラインでゾーニングした。

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 フロア中央を走る「オープンワークエリア」は、端から端まで100mにわたり遮るもののない見通しを確保。床にはつながりを途切らせないシームレスな素材を使用し、人やアイデアが流れる「川」を表現した。

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 川の片岸には、飲食を交えてリラックスして働ける「コモンズエリア」を配置。改修前の4倍に拡張され、フロア全体の25%を占めるこのエリアは、「お昼を食べる場所がない」という従業員の健康課題(ストレス緩和)のデータに基づいて設計されたものだ。

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 もう一方の岸に配置された「チームコワークエリア」には、チームのアイデンティティを象徴するレッドカーペットを敷き、専用の造作吊り照明を設置した。説明がなくても直感的に「エリアの役割の違い」が五感に伝わるよう、微細な色温度や壁面の特殊塗装にまでこだわった。

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 「100mの見通し線を確保したことで、どこにいても誰がどう働いているかが緩やかに伝わり、孤独感が解消された。チームの『密なつながり』と、他部門の気配を感じる『オープンさ』が同居する空間が実現できた」と香山氏はその手応えを語る。

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AIで「可変」を可能にする働き方とオフィス設計

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この記事の著者

栗原 茂(Biz/Zine編集部)(クリハラ シゲル)

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