挑戦する「ヒト・風土」を創るFRONTIER DOJOの仕組み
サントリーホールディングスの未来事業開発部は、飲料・酒類・健康食品などに次ぐ「第4の柱」となる新規事業の創出と、社内ベンチャー制度「FRONTIER DOJO」を通じたイントレプレナー育成・風土醸成をミッションに掲げている。制度運営には未来事業開発部だけでなく、経営戦略本部や人財戦略本部も加わり、全社的なプロジェクトとして推進されている。
「FRONTIER DOJO」は、起案者が「白帯」としてエントリーし、書類・面接審査を経て「茶帯」「黒帯」、そして事業化専任となる「免許皆伝」へと昇格するユニークな仕組みだ。過去5年間で13件の事業が免許皆伝に至っている。
同制度の最大の目的は、事業創出そのもの以上に「『価値のフロンティア』に挑戦するヒト・風土」を社内に創り出すことにある。そのため、事務局はエントリー数を増やすための風土醸成施策に最も注力している。例えば、地方拠点やグループ会社に赴き心のハードルを下げる「出張版DOJO」や、社外起業家を招き、社員がふらっと立ち寄って酒を交わしながらネットワーキングできる「DOJO Bar」など、社員の関心度に応じた多彩なアプローチを展開している。その結果、現在も年間100件を超えるエントリー数を維持し、活発な提案が生まれる土壌を育み続けているのだ。
水の研究所から起案。社会課題を解決するWater Scape
第3期で免許皆伝となり、Water Scapeを立ち上げた川崎雅俊氏は、元々サントリーの水科学研究所で約20年にわたり水資源のサステナビリティ研究に従事してきた生粋の研究員だ。
サントリーが自社の水資源をサステナブルに使い続けるための研究を深める中で、川崎氏は世の中を見渡し、社会全体に水に関する様々な課題が顕在化していることに気づく。そこで「自社で長年培ってきた水科学の知見や解析技術を他メーカーに提供すれば、社会全体がサステナブルになるのではないか」と考えたことが事業起案の原点だった。
Water Scapeがターゲットとするのは、水を使用してものづくりを行うメーカーの工場現場や、サステナビリティ対応を求められる本社部門である。彼らが抱える「将来にわたり地下水を利用し続けるための管理方法がわからない」「サステナビリティの観点で節水活動等に取り組みたいが社内への投資説明が難しい」といった漠然とした不安に対し、これまでの水の使い方を「健康診断」し、必要に応じて「治療」や「定期検診」といった伴走支援を行うコンサルティングサービスを提供する。
当初は研究所内で起業を模索したものの、ビジネスに関しては素人ばかりで壁にぶつかってしまう。行き詰まりを感じていた折に「FRONTIER DOJO」の存在を知り、事業化の支援を求めてエントリーに踏み切ったのである。
