AIで「可変」を可能にする働き方とオフィス設計
チームスペースを増やせば、今度は個人のソロワークスペースが圧迫される。この限られた面積の奪い合いという二項対立を解決するのが、イトーキが新たに実装したIoTデバイスソリューション「ITOKI OFFICE DEVICES」だ。
オフィス内のデスクや椅子に組み込まれたセンサーが従業員の「不在」をリアルタイムに検知。予約されているにもかかわらず一定時間使用されていない場合、表示用デバイスやスマートフォンのアプリケーションを通じてシステムが利用者に確認を促し、不要な予約を自動で解放する。
また、チーム予約が入っていない時間帯はフリーのソロワーク席としてシームレスに一般開放されるため、ハードウェアの稼働率は極限まで高められる。データとテクノロジーが空間の「ムダ」を24時間体制で監視し、チューンアップし続ける仕組みがここに完成した。
経営者の「最強の右腕」としてのデータプラットフォーム
このデータドリブンなアプローチは、オフィスの設計プロセスそのものにも変革をもたらしている。香山氏はデザイナーの視点から次のように語った。
「従来のオフィス設計は、従業員への膨大なインタビューから『仮説』を組み立てる必要があり、多くの時間を費やしていた。しかし、現在はWorkers Trailなどの行動ログデータによって、最初から高精度な事実が手元にある。仮説構築のスピードが格段に上がったことで、浮いた時間を『五感に訴えるクリエイティブなデザイン』という、人間にしかできない業務へ集中させることに充てられるようになった」(香山氏)
セッションの締めくくりとして、八木氏は今後の展望について次のように言及した。
「次のステップとして、AIが自律的にタスクを遂行する『AIエージェント』の実証実験を開始する。従業員がカレンダーやチャットで『30分後に3人でブレストしたい』とAIに投げかけるだけで、センサーが検知した空き状況と連動して最適な場所を自動で確保する世界を目指す」(八木氏)
これを受けてモデレーターの清水氏は、次のような提言でセッションを括った。
「データ分析のプロセスと、それをフィジカルな空間デザインへと昇華させるサイクルを回し続けること。これは、人的資本経営を推進するマネジメント層にとって、極めて強力な『右腕』を手に入れることを意味する。オフィスは作って終わりではない。データとともに生き、従業員のエンゲージメントを向上させ続ける持続的な投資対象へと進化したのだ」(清水氏)
