老舗=保守的は誤解。理念を軸に変わり続ける長寿企業
今回の調査結果で特筆すべきは、「長寿企業=老舗のブランドにあぐらをかく保守的な存在」というイメージが覆された点だ。ハーバード・ビジネス・スクールのジェフリー・ジョーンズ教授も、本調査結果を見て「日本企業は総じて保守的だという見方に一石を投じる」と驚きのコメントを寄せている。事実、100年以上事業を継続できた理由のトップは、「ブランド力」や「安定した顧客基盤」を抑え、「時代や環境変化に合わせた事業内容・構成の見直し」(46.6%)であった。
長寿企業は、人材の要件やターゲット市場、販売方法など、事業を進めるための要素は柔軟に変える一方で、社是や経営理念は決して変えずに軸としている。さらに直近5年間で成長軌道にある企業ほど、この不変の理念が単なるお飾りではなく、日々の業務や意思決定に深く結びついていることが判明した。中村氏は、長寿の要因とは「理念という軸を守りながら変わり続けること」であると強調し、変化への対応力こそが持続性の源泉であることを示唆した。
競争力の源泉は顧客との信頼。ニーズを起点に価値を創出
では、長寿企業が変化し続けるための競争力の源泉はどこにあるのだろうか。自社の強みについて尋ねた結果、「強固な顧客基盤・顧客との信頼関係」(66.5%)がダントツの1位となり、技術力や営業力を大きく引き離した。さらに、約8割の企業が創業時の強みをそのまま維持するだけでなく、時代に合わせて発展させながら、現在も経営の基盤として活かしていることが明らかになった。
中村氏が特に注目したのが、イノベーションを生み出す原動力である。最も多かった回答は技術そのものや技術者のひらめきではなく、「顧客ニーズ・顧客課題」(42.5%)であった。さらに、業績が成長軌道にある企業ほど、顧客を単なる販売先としてではなく、新しい価値を共創するパートナーとして重視していることもわかった。長寿企業は顧客との長期的な信頼関係を築き、対話を通じて社会の課題をいち早く捉えることで、事業領域を広げ続けているのだ。
