CVCを持続させる「戦略と財務」のバランス
戦略的リターンをどのように定義しても、一つの大きな障害が立ちはだかります。それは「組織の目標達成に向けた時間軸と、イノベーションを生むまでに要する時間軸とのズレ」です。
一般的な3ヵ年の中期経営計画や人事ローテーション、経営トップの交代などの要因によって、企業のイノベーション活動はしばしば立ち消えてしまいます。戦略的リターンのみを狙う場合、このリスクはいっそう大きくなります。
成果の乏しい、あるいは純粋に戦略的リターンを求めるプロジェクトは、経営陣が交代したり、親会社が業績不振に陥ったりした瞬間、真っ先に打ち切られるか、少なくとも「ゾンビ」状態に追い込まれます。こうした事態を避けるためには、企業のイノベーション活動が財務的にも自立できるようにしておかなければなりません。
上記の事態を避けるために、極端に保守的になるCVCも存在します。しかし、単なるリスク回避の姿勢はハイリスク・ハイリターンによる戦略的優位を取り逃がす結果を招きかねず、財務面からも戦略面からも魅力に乏しい、凡庸なポートフォリオに終わってしまいます。
一方、CVC投資をまるごと専門家に外注する企業もあります。しかし、こうした方法では得られるノウハウやスタートアップとのつながりのほとんどが外注先の手元に残ってしまいます。目的次第では構いませんが、見過ごせないトレードオフがある点は注意すべきです。
その中で最も機能すると考えられるのは、目的と役割を明確に切り分けた「二人組合」によるパートナーシップです。すなわち、戦略投資枠と財務投資枠を分けるやり方です。
- 戦略投資枠:企業自身が戦略的なポテンシャルを評価し、社内の事業部門とスタートアップの協業を実現する責任を負い、親会社にとって重要な領域へと案件発掘を方向づける役割を担います。
- 財務投資枠:信頼できるパートナー(多くは経験豊富なベンチャー投資家)が、両方の枠について財務デューデリジェンスを担います。ただし、彼らの主眼は財務投資枠が十分に高いリターンを生み、戦略投資枠で生じる損失を補えるようにする点にあります。
二つのアプローチにより、自社の戦略上の優先順位を深く理解した社員を現場に置きつつ、ポートフォリオ全体のリスク管理について外部専門家の知見を活用できます。理想を言えば、財務的な引受審査、技術面の精査、そして自社の戦略ビジョンに対する理解がある人材をそれぞれ採用し、引き留めたいところですが、残念ながらそうした人材は極めて少ないと言えます。
