日立、リクルートを経てVC、そして世界最大級のCVCコミュニティを設立
Biz/Zine編集部・梶川(以下、梶川):まずは西条さんのこれまでのキャリアと、Counterpart Venturesの設立背景についてお聞かせください。
西条祐介氏(以下、西条):日立ソリューションズでソフトウェアエンジニアとしてキャリアをスタートし、事業開発への転身を経て、2007年からシリコンバレーで活動していました。その後、リクルートの投資室長としてCVCを通じた新規事業立ち上げを経験し、2018年1月にサンフランシスコでCounterpart Venturesを設立しました。現在はパートナーのパトリック・エッゲン(Patrick Eggen)を含めた7名体制で、3つのファンドを運営しています。
梶川:VCとしての投資活動だけでなく、大規模なCVCコミュニティ「Counter Club」も運営されていますね。
西条:はい。私自身がCVC出身だからこそ痛感するのですが、CVCは非常に不確実性が高く、担当者は日々孤立した悩みを抱えています。しかし、その知見や失敗談を公開・共有する場がありませんでした。そこで立ち上げたのが「Counter Club」です。現在ではグローバルで800社、1,800人以上のキャピタリストが参加する規模に成長しました。世界で最も読まれている「CVCレポート」をSilicon Valley Bankと共同で発行している他、毎年9月には1,000人規模の年次サミットを開催するなど、世界的なエコシステムとなっています。
VCが巨大コミュニティを運営する“真の狙い”とは?
梶川:資金を集めて投資を行うVCが、なぜそこまで巨大なコミュニティを自ら運営しているのでしょうか。
西条:結論から申し上げると、最大の目的は「投資先企業に対するバリューアップ」です。米国のベンチャー投資市場は非常に競争が激しく、完全な売り手市場です。有望なスタートアップほど優秀なVCから資金を集められるため、投資家側も「我々から出資を受けることで、どのような明確なメリットを提供できるか」を示さなければ、投資枠すらもらえません。
梶川:その強力な「武器」として、Counter Clubのネットワークが機能しているわけですね。
西条:おっしゃるとおりです。たとえば、我々が製造業の有望なスタートアップに投資したとします。その際、コミュニティに参加しているフォーチュン500に入るような大企業のCVC担当者を、顧客候補や戦略的投資家として投資先に直接引き合わせることができます。単に資金を出すだけでなく、大企業のネットワークを活用して目に見える形で事業成長を加速させる。この差別化を図るために、コミュニティを戦略的に運営しているのです。
