「自社だけのための新規事業」は作らない。両氏の産業創出ビジョン
Biz/Zine編集部・梶川(以下、梶川):「新規事業LEADERS 2026」の最後のセッションとして、個社の新規事業の出口戦略からさらに視座を上げ、「産業を作る」というテーマでお話しいただきます。まずは自己紹介をお願いします。
中馬和彦氏(以下、中馬):みずほフィナンシャルグループで新規事業の責任者(CBDO)をしています。同時に、スタートアップ投資を行うBlue Labの責任者も務めています。長くKDDIで新規事業とCVCの責任者をしておりましたが、2025年にみずほフィナンシャルグループに移りました。
私がみずほに来て新たに設定した新規事業のタグラインは、「強い日本の産業をつくろう、もう一度。」です。失われた30年と言われますが、これから生み出され続ける30年にしたいという想いで、事業ではなく、産業を創ることを目指しています。そのため、みずほのための新規事業ではなく、新たな産業を創るというタグラインを掲げることにしたのです。自前主義の0→1ではなく、スタートアップを中心としたパートナーとのオープンイノベーションを通じた事業開発を行っているのが特徴です。
藤本宏樹氏(以下、藤本):住友生命の藤本です。私たちは現在、主力事業として「Vitality」という健康プログラムを展開していますが、これも元々は新規事業でした。従来の生命保険は「リスクに備える」ものでしたが、そこに「リスクを減らす」という身体的ウェルビーイングの価値を掛け合わせたものです。
現在はさらに拡張し、「WaaS(Well-being as a Service)エコシステムの構築」を進めています。ウェルビーイングの領域はまだ世の中ゴト化しておらず、マーケットそのものがない状態です。だからこそ、自社だけで閉じるのではなく、オープンイノベーションを通じてマーケットを開拓し、「ウェルビーイング産業」を日本から立ち上げていこうと取り組んでいます。
出島、我田引水……藤本氏が指摘する「大企業の新規事業」三つの罠
梶川:大企業の新規事業の現在地について、藤本さんは様々な事例や海外の動向を見られる中で、どのように感じていらっしゃいますか。
藤本:正直なところ、日本の大企業の新規事業は苦戦していると感じています。6月にはフランスのイノベーションイベント「VivaTech」を視察してきましたが、そこでは韓国のパワーが圧倒的でした。国やエコシステム、大企業が一丸となってブランドを作り上げており、ヨーロッパでも「アジアのイノベーションといえば韓国」という認識になりつつあります。日本がこれだけ地盤沈下している今こそ、大企業が事業を立ち上げなければなりません。
しかし、大企業の新規事業には三つの課題があります。一つ目は「出島で作ってしまうこと」です。出島は動きやすい反面、本業の経営戦略とアラインしていないため、社内から無視され、結局小さく終わってしまいます。
二つ目は「マーケティングの視点とリソースの不足」です。実証実験までは進んでも、そこからグロースさせるための広告宣伝費などのリソースが新規事業に割かれないため、スケールしません。
三つ目は「クローズドなオープンイノベーション」になっていることです。自社のエコシステムにいかにスタートアップを取り込むかという我田引水になっており、Win-Winの関係を築けていないケースが多いと感じています。



