「クライアント0」を体現するAI戦略──価値提供構造の変化と収益性向上のメカニズム
日置:AIの進化によって資本市場ではSaaS企業などの価値低下が懸念される一方、NECはAIを成長の強力なエンジンと位置づけています。AI戦略「BluStellar(ブルーステラ)」を中心に、どのように収益性を向上させていくのでしょうか。
PwC、IBM、デロイト、BCG等でコンサルティングに従事。現在は各協会のフェローのほか、株式会社CFO本部取締役、リ・デシグナーレ合同会社代表、立教大学大学院兼任講師などを務める。著書に『ワールドクラスの経営』(共著、ダイヤモンド社)など。
雨宮:AIの進化によって、従来のコーディングやシステム構築(SI)といった中間プロセスの価値は自動化・超効率化により低下する傾向にあります。そして、価値の重心は上流の「アジェンダ定義・コンサルティング」と、下流の「継続改善・オペレーション」へとシフトします。
当社は自社開発の生成AI「cotomi(コトミ)」や最先端の「Agentic AI(自律型AI)」、パートナーシップを活かし、顧客のアウトカム(成果)にコミットしていきます。自社で徹底的に使い倒して課題を洗い出し、それを外販モデルへと結晶化させる「クライアント0」の実践知こそが最大の差別化要因です。これにより、2030年度に向けてBluStellar事業の売上収益を1.3兆円、Non-GAAP営業利益率を25%へと引き上げ、全社の利益率向上を牽引していきます。
「全員AI」の新組織──「コーポレートAI・Workforce部門」設立の背景と狙い
日置:2026年8月10日に発表された、部門長から社員まで全役割をAIが担う「コーポレートAI・Workforce部門」の設立(8月1日付)は市場に大きな衝撃を与えました。この先進的な組織を新設した背景と特徴について教えてください。
雨宮:NECが「AIネイティブカンパニー」に変革するためには、道具としてAIを使う段階を超えて、人とAIの共創による新たな組織像を自ら提示する必要があります。そこで発足させたのが「コーポレートAI・Workforce部門」です。
この組織は「AI部門長」「AIボード」「AIマネージャー」「AI社員」という4階層のエンタープライズアーキテクチャで構成されており、現在FP&A領域などで“17人”のAIエージェントが自律稼働しています。法務やデータ分析などそれぞれ専門スキルを持つAI社員に対し、AIマネージャーがタスクを配分し、AI同士が自律的に議論・分析を行って予算執行会議の資料作成や着地予測、改善策の導出までを一貫して自動実行します。人間サイド(CFOやリアル組織)は発注と最終的な意思決定・評価・ガバナンス管理に専念する形をとっています。



