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日本企業の中期経営計画が機能しない理由──「予測」から「能動的推論」へ誘う『未来思考』とは何か

ゲスト:グレートジャーニー合同会社 代表/東京大学 未来ビジョン研究センター 客員研究員 安川新一郎氏

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世界を捉える解像度を上げる「構造」と「文脈」とは

栗原:安川さんの著書では、現在の世界的なカオスや混乱を読み解くフレームワークとして「世界の構造変化」と「人々の意識の変化」が提示されています。

安川:今、世界で何が起きているのかを客観的に把握するためのフレームワークが、著書の第2部で詳述している視点です。現代世界の混乱は単なる政治対立ではなく、巨大システムとして「統合化」する世界と、主体(アクター)として「分散化」する世界、そして人々の意識の「記号化」と「多元化」が引き起こす歪みなのです。

画像を説明するテキストなくても可
図版出典:安川新一郎『未来思考2045 危機と分断、そしてAIは世界をどのように変えるのか?』(ダイヤモンド社)を参照し編集部にて作図/クリックすると拡大します

 まず客観的な構造として「統合化」が進んでいます。ユニクロ、ZARA、マクドナルド、スターバックスが世界中で展開され、グローバル人口の多くが似通った都市生活を送るようになりました。AIや生成字幕、配信サービスの普及で映画や音楽の「世界同時化」が起こり、資本主義と合理主義が極限まで行き着くマックス・ウェーバーの言う「脱魔術化」が完成しつつあります。しかし、この統合化は同時に少子化や地球温暖化(惑星限界)という成長の限界に直面しています。

 他方で、国際社会で主導的役割を担っていた大国の力が低下し、リーダー国家がなくなる状態「Gゼロ」時代では、政治的空洞化や非国家主体の台頭により「分散化」も同時進行し、社会構造を不透明にしています。

栗原:生活や技術がグローバルに統合される一方で、社会の根底では分散と破綻が進んでいるわけですね。人々の意識の側面では何が起きているのでしょうか。

安川:主観的な文脈において「記号化」と「多元化」が拮抗しています。現代人は、世代が進むにつれてIQテストなどの得点が向上しつづける「フリン効果」が示すように認知能力が向上しています。そして、世界や他者を「学歴」「年収」「WOKE」「ネトウヨ」といった単純なスペックやラベル(記号)に置き換えて効率的に処理する「記号化」にも適応しました。政治もワンフレーズのスローガンに依拠し、対話が失われています。

 一方で、平野啓一郎氏の言う「分人(dividual)」のように、人々は副業、SNS、アバター、推し活などを通じて複数のアイデンティティ(多元化)を持つようになりました。しかし、アテンション・エコノミーの中で情報が過熱し、特定の言動を記号として捉えて集団で攻撃する「キャンセルカルチャー」が横行しています。

二つの世界の相反する力とテクノロジーの「再魔術化」

栗原:記号化による単純化と、多元化による複雑化という、全く逆のベクトルが交錯しているのですね。

安川:そのとおりです。現代人は「巨大システムに適合するために自分を記号化する力」と、「居場所を求めて意識を多元化させる力」という矛盾する二つの強い力に引き裂かれています。

 さらに不確実性を深めているのが、先端テクノロジーによる世界の「再魔術化」です。生成AI、スパコン、脳波インターフェース(BMI)、ナノロボティクスなどは高度化しすぎて一般人の理解を超越し、あたかも「魔法」のように感じられる領域に入りました。

 ヘンリー・キッシンジャーが「AIは人間を理解不能な世界へと連れ戻す」と危惧したとおり、合理化を極めた先で世界は再びブラックボックス化(再魔術化)し、宗教回帰(無宗教型スピリチュアルやカルトへの傾倒など)や生物多様性の喪失、耐性菌問題などの新たな課題を可視化させています。

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図版出典:安川新一郎『未来思考2045 危機と分断、そしてAIは世界をどのように変えるのか?』(ダイヤモンド社)を参照し編集部にて作図/クリックすると拡大します

 しかし、この構造を正しく見抜くことができれば道は開けます。組織や個人が「多元的な顔(分人)」を持つ存在であると肯定できれば、全面的な合意はできずとも、気候変動や災害対応といった特定課題において「部分的に手を組み動的に協働する」という新しい連帯が可能になるからです。

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AI時代の経営企画に求められる「構造化」と「動的協働」

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この記事の著者

栗原 茂(Biz/Zine編集部)(クリハラ シゲル)

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