SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

Biz/Zine Day 2026 Autumn

SOMPO HD 広瀬執行役員と語る、過去最高益に貢献した強い「FP&Aとグループ本社」のつくり方

登壇者:SOMPOホールディングス株式会社 広瀬杏太郎氏、FP&Aアドバイザー 池側千絵氏

栗原 茂(Biz/Zine編集部) [著] / 長谷川 梓 [写]

  • Facebook
  • X

再保険の見直しとマイクロセグメンテーションによる「数百億円の成果」

 こうした複雑なリスク構造を持つ保険業において、FP&Aの導入はどのような定量的成果をもたらしたのだろうか。広瀬氏は「持株会社による全体最適の視点」と「高度なデータ分析」を掛け合わせた具体的な成功事例を紹介した。

 1つ目の大きな成果が「再保険構造の最適化」である。自然災害の発生モデルや科学的なデータアプローチを用いて予測精度を高め、自社で保有するリスクと再保険会社へ移転するリスクの黄金比率を再検証した。

画像を説明するテキストなくても可
資料提供:SOMPOホールディングス株式会社/クリックすると拡大します

 従来、個別事業会社や特定部門の視点では「自部署の利益の安定化を図るため、より多くの再保険をかけてリスクを逃がしたい」という部分最適のインセンティブが働く傾向があった。ここに持株会社のFP&Aが介在し、グループ全体の巨大なバランスシートを活かしたリスク保有余量を提示した。

 「単に、再保険を減らすことを指示するのではなく、社内の管理会計上の評価プロセスを調整することで、事業会社のインセンティブとグループ全体の利益を合致させました。結果として最適なリスク移転のスキームを構築し、年間で数十億円規模の出再保険料(再保険会社に支払う保険料)の削減というインパクトを創出できました」と広瀬氏は明かす。

 2つ目の成果は「マイクロセグメンテーション(顧客データ・契約データの細分化分析)に基づく収支改善」である。従来は地域や車種などの大まかな区分で管理されていた契約データを、運転者の年齢、車種、建物の築年数、地域などの多角的な軸で細分化して採算性を可視化した。

画像を説明するテキストなくても可
資料提供:SOMPOホールディングス株式会社/クリックすると拡大します

 高リスク・低採算なセグメントを特定して契約条件の見直しや引き受けの厳格化を断行する一方、リスクの低い良質な契約には競争力のある料率を提示するポートフォリオ改革を推進した。このデータドリブンな改善の積み重ねにより、修正連結ROE(自己資本利益率)は中計目標である13~15%水準に向けて着実な改善を遂げ、2025年度には修正連結利益5,352億円という過去最高益の達成に大きく貢献したのである。

画像を説明するテキストなくても可
資料提供:SOMPOホールディングス株式会社/クリックすると拡大します

欧米の専門性と日本の規律を融合する「SOMPO型ハイブリッドモデル」

 広瀬氏は過去に海外子会社管理や海外駐在を通じて、欧米企業における本場のFP&A実務を経験している。同氏は「欧米式FP&A」と「日本式経営管理」の違いについて次のように整理した。

  • 役割の概念:欧米が独立したプロフェッショナルな専門職であるのに対し、日本は経営企画や経理の「その他付随業務」として扱われやすい。
  • レポートライン:欧米はCFOを頂点とした一元的なラインが存在するが、日本は事業社長に対するラインにとどまりサイロ化しやすい。
  • キャリアパス:欧米が生涯の専門職であるのに対し、日本はゼネラリスト育成のためのジョブローテーションの一環とされる傾向がある。
画像を説明するテキストなくても可
資料提供:SOMPOホールディングス株式会社/クリックすると拡大します

 SOMPO HDでは、欧米の強み(専門性・SaaSツール・データ構造化)を取り入れつつ、日本の強み(組織分掌の規律・厳格な実行力)を掛け合わせた「SOMPO型ハイブリッドモデル」の構築を目指している。その組織進化のステップは極めて戦略的だ。

  1. 2023年度まで:経営企画部内の一機能としてFP&A業務を遂行(認知は限定的)。
  2. 2024年度:グループCFOの主導で、経営企画部からFP&A機能を独立させ、専門組織「事業分析室」を新設(広瀬氏が室長に就任)。社内外に本格推進を強力にアピール。
  3. 2025年度:1年間で人員拡充・基盤整備を進めた後、再び経営企画部へと統合し「FP&Aグループ」と命名。経営戦略の立案とFP&A機能を不可分なものとして一体化。
画像を説明するテキストなくても可
資料提供:SOMPOホールディングス株式会社/クリックすると拡大します

 「一度専門組織として独立させて『ハコ』の存在感を示した後に、本丸である経営企画部へ戻すことで、戦略立案の場にFP&Aの観点を完全に定着させました。広瀬氏自身が事業分析室長から経営企画部長へ就任したプロセスこそ、FP&Aモメンタムを維持する最良の仕掛けです」と池側氏も評価する。

 さらに同社は、2017年に大型買収した海外子会社「SOMPOインターナショナルホールディングス」が持つFP&A機能を「Center of Excellence(CoE:組織横断の高度専門拠点)」として活用している。海外で先行導入されていたコネクテッド・プランニング(統合計画)システムである「Anaplan」の活用ノウハウを日本へ移植するとともに、若手社員を海外へ派遣して本場の実務を学ばせる育成サイクルを回している。

次のページ
FP&A不要論を突破する「まずはハコ(組織)からつくる」実践アプローチ

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
関連リンク
この記事の著者

栗原 茂(Biz/Zine編集部)(クリハラ シゲル)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

  • Facebook
  • X

Special Contents

PR

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング