SOMPO HD 広瀬執行役員と語る、過去最高益に貢献した強い「FP&Aとグループ本社」のつくり方
登壇者:SOMPOホールディングス株式会社 広瀬杏太郎氏、FP&Aアドバイザー 池側千絵氏
FP&A不要論を突破する「まずはハコ(組織)からつくる」実践アプローチ
日本企業においてFP&Aの導入や改革を推進しようとすると、必ずと言っていいほど直面するのが社内の抵抗、いわゆる「FP&A不要論」である。「現状で困っていない」「直接売上を生まない部門にコストをかけるべきではない」という批判に対し、どのようにアプローチすべきなのだろうか。
広瀬氏は「役員のコミットメントを得て成果を出すのか、成果を見せてコミットメントを得るのかは、まさにニワトリと卵の議論になりがちです。だからこそ、我々は『まずはハコ(組織)から作ってしまう』ことを提案します」と自身の経験を振り返り、語る。
既存の経営企画部や経理部への「業務追加」で済ませるのではなく、同社のように明確な名称を持った独立組織(事業分析室など)を新設し、職務分掌規程にそのミッションを明文化することが最初の一歩となる。形を先に作ることで、役員からの予算や人員のコミットメントを獲得しやすくなり、初期の小さな成功体験(クイックウィン)を提示して次のシステム投資や人材獲得へとつなげる好循環を生み出せるのである。
また、FP&Aの質(精度・粒度・適時性)を担保するうえで避けられないのが「脱Excel」とシステムの導入だ。従来のExcelを用いたバケツリレー方式での集計作業は、ファイルの破損や誤入力の修正に多大な労力を費やし、担当者が数値の「集計作業員」と化してしまう。
AI時代における「算数」と「国語」──人が果たすべき真の価値発揮
セッションの終盤、議論は生成AIをはじめとするテクノロジーの急速な進展と、これからのFP&A人材に求められる本質的スキルへと及んだ。
現在、AI技術の進化により、過去データの自動集計だけでなく、将来の収支予測(フォーキャスト)の自動生成や、自然言語での対話を通じた経営課題の抽出といった作業が自動化されつつある。データ分析という「作業」の領域において、テクノロジーが果たす役割は飛躍的に高まっている。
「しかし」と広瀬氏は強く訴える。
「AIが導き出した分析データをもとに、情熱(パッション)を持って経営陣に提案し、事業部を巻き込んで組織を動かしていくコミュニケーションは、間に立つ人間にしかできません。FP&Aに必要なのは、数値を正確に扱う『算数(ファイナンス)』のスキル以上に、伝えるべき本質を言語化し人を説得する『国語(コミュニケーション)』のスキルです」(広瀬氏)
トップマネジメントによる強力なコミットメントを獲得し、単なる数字の集計にとどまらず「経営に資するインサイト(示唆)」を提供して具体的なアクションを導き出すことこそが、FP&Aの真の価値発揮にほかならない。
最後に広瀬氏は、参加したミドルマネージャーやリーダー層に向けて次のようなメッセージを送った。
「会社の規模が大きいことが必ずしも有利とは限りません。小規模な組織の方がかえってフットワーク軽く変革を進められる場面も多くあります。組織の大小を問わず、まずは小さな枠組みをつくり、情熱を持って経営への提案を始めてみてください。それが日本企業の企業価値向上につながると信じています」(広瀬氏)
金融・サービス業のみならず、激変するビジネス環境の中で持続的成長を目指すすべての日本企業にとって、SOMPO HDが実践する「ハイブリッド型FP&A」への挑戦は、強いグループ本社を構築するための極めて明快な指針となるだろう。

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