2.VC 投資家の裏にいる人達の変化
次にVCのさらに裏側を見ていくとその流れがよりはっきりと見えてきます。
VCのビジネスは基本的に、LP (Limited Partners) からお金を預かってスタートアップへ投資し、スタートアップのExitを通してお金を増やしてLPに返す、という金融ビジネスです。VCはお金を増やす責任があるとともに、LPの意向をある程度聞く必要があり、スタートアップはVCを理解するためにLPと会って彼らのニーズや視点を見たほうが良い、と言われるほどです。
LPには通常、基金や年金、機関投資家や富裕層を中心とした個人投資家などが含まれます。(下の表の通り)
LPにとってVCへの出資はポートフォリオのほんの一部であり、ヘッジファンドなどにも資金運用を任せていたりします。
なのでVCだけではなくヘッジファンド側の動きも一緒に見てみると、LPが今何を気にしているかがある程度見えてくると考えられるのですが、実は彼らLPもインパクト投資をここ最近気にし始めている風潮が見られます。
たとえば昨年、世界最大の資産運用会社であるBlackrockがインパクト投資の金融商品を始めました。私は金融畑の人間ではないので業界内でそれがどういう評価を受けているのかは分かりませんが、最も利潤にうるさく賢い人達であるBlackrcokでそのような動きをしている、ということは、その領域で十分に儲かるということではないかと推測しています。またGlodman SachsはSocial Impact Fundを2013年に設立し、インパクト投資のアドバイザリーを行うImprint Capitalを昨年買収しています。
こうしたインパクト投資への注目はスタートアップの文脈ではエンジェル投資家にあたる、富裕層の個人投資家からの需要とも言われています。また1980年代以降に生まれたミレニアル世代は、社会貢献への意識が高く、インパクト投資に対する需要も高いと言われており、そうした顧客に対する金融商品という面もあるのだと思います。
実際、Bill & Melinda Gates財団は2016年の年次レポートで、エネルギーと”時間に関する貧困”が世界の問題であり、その解決策はイノベーションである(The solution is innovation, and you can help)とし、エンジニアや起業家、科学者やソフトウェア開発者に、問題解決の手助けを呼びかけています。つまり、こうした問題を解決するにはテクノロジとイノベーションが必要とされているという認識があり、テクノロジとイノベーションといえばまさにスタートアップが得意とする領域であるとも言えるのではないでしょうか。
(ちなみに Blackrock は昨年、テクノロジが世界に与える影響に関しても年末に簡単なレポートを出しているので読んでみると面白いと思います)