世界の投資家は、2015年の米国における投資額の減少をどうみたのか?
ディクソン・ドール氏は、シリコンバレーのベンチャーキャピタル「DCM」の共同創業者であり、35年以上にわたり米スタートアップ業界の発展に大きな影響を与え続ける、起業家、投資家の1人だ。基調講演の冒頭で「投資先企業を見極めるときに、これをチェックリストとして使ってほしい」と示した、“素晴らしい起業家の特徴”は、氏が長年ベンチャーキャピタル業界に身をおく中で見出した10のポイントだという。
そして、ドール氏は、昨今の米国ベンチャーキャピタル市場の変化を詳しく紹介した。まず、指摘したのは、ずっと上り調子が続いてきた市場が、2015年になって減速しているという点だ。
しかしドール氏によれば、この状況は「ベンチャーキャピタル業界の崩壊」を表しているわけではない。右肩上がりに投資額が伸びてきた結果、今は投資の対象が足りなくなってきた段階で、市場では時折このような調整が発生するのが普通であるという見方だ。この市場の調整により、評価額が10億ドルを超える「ユニコーン企業」も評価額がかなり落ちている状況だが、企業活動そのものの調子が悪いというわけではない。
一方、「IPOの数が激減し、投資額に対するエグジット額の割合が1を下回る」など、資本市場は著しく低迷している。これはベンチャーキャピタル業界にとって健康的なサインではない。ドール氏は市場のボラティリティや新興国市場、特に中国の流動性の低さ、世界的な低金利の影響などについても、懸念を示した。なお、IPOが減っている代わりに、M&A市場は活気がある。ベンチャーキャピタルのエグジットの90%くらいはM&Aで完了するという状態に変化してきているそうだ。
もうひとつ、市場の変化で重視すべきなのが、「資金調達の方法」だ。アメリカではクラウドソーシングを通じたエンジェル投資という新しい資金調達方法が使われるようになってきた。今後日本でも、同様の動きが見られるだろう。