“APIを作っただけ”で使われないと、イノベーションは生まれない
——コンカーとSansanもAPIで連携していますが、それはどのような経緯で実現したのでしょうか?
阪尾:
私がSansanさんに「一緒に何かやりませんか」とお話に行ったのは去年の春頃です。最初は今とは違う提案をもっていきました。コンカーは領収書、Sansanは名刺を、スキャナで読み込んでデータ送信すると裏でデータ入力がされるというしくみがありますので、この部分で一緒にできることがあるのではないかと考えたんです。ただ、Sansanさんは名刺管理以外の事業展開は考えていないというお話で、「それは大変失礼しました」と(笑)。
山田:
僕は、阪尾さんがいらっしゃったときに初めてコンカーのサービスの詳細を知ったのですが、非常に便利なサービスで、Sansanとも噛み合うだろうと感じました。ただ、APIで連携するには、必ずつなぎこみの開発が必要で、それを誰がやるのかというのは、APIを提供するうえで行き当たる問題なんです。その後しばらく経って、コンカーさんの方でつなぎこみを担当されるパートナーさんを見つけてこられたので、連携が実現しました。
阪尾:
サービスプロバイダー同士だと、双方が「APIを公開するので使ってください」という立場で、お互い自分からは手をつなぎに行かないということが、よくありますね。ただ、間をつなぐことをビジネスにしているパートナーさんもいるので、「名刺連携」が実現しました。これは、接待費の経費情報を入力する際に同席者の氏名を選択すると、Sansanのデータから会社名と役職名を自動入力できることで、入力ミスや不正を防止するというものです。
その後、複数のサービスがそれぞれAPIを公開し、お互いにつなぎ合わせることで化学反応が生まれたのが、「目的地間交通費判別」の機能ですね。「駅すぱあと」を提供しているヴァル研究所さんとは、データ連携ができたら交通費精算が便利になるね、という話を以前からしていました。具体的なソリューションがなかなか見つからなかったのですが、ヴァル研究所さんが「RODEM」というサービスを出されたことで、予定管理から交通費精算までいっぺんに自動化しましょう、という話になりました。その際、外出予定のデータに入力されている企業名から自動で経路検索をするには、訪問先の事業所の住所が必要で、それならSansanのデータから検索しよう、という形で結びついていったんです。
山田:
オープンイノベーションのポイントとして、APIを公開しても、それを棚に置いておくだけでは何も生まれないんですね。ちゃんと皆さんが収益を得られるようなスキームを用意しないとイノベーションになりえない。だから、我々のミッションには、APIを使う人を連れてきたり、利用をおすすめしたりするということが含まれるんです。今回であれば、コンカーさんがヴァル研究所さんというプレイヤーを連れてきてスキームをデザインし、我々も少しお手伝いした、という形になります。