反転授業についてよくある質問
ここからは、反転授業についてよく聞かれる質問に答えていきましょう。
Q:課程すべてを反転授業に転換するべきか。
A:コースを丸ごと反転授業に転換しなくてはいけないわけではありません。基本概念の概観を示すために、単元の最初にだけ反転授業を取り入れている先生もいます。
Q:どれくらい事前学習をさせればよいか。
A:これは実はよく分かりません。ビデオの長さについては、個人的には、生徒が8才なら8分を超えない長さというように、年齢×1分を一般的な目安としています。ビデオは長くないほうが効果的です。1時間も教材ビデオを見ようという生徒はいません(映画やテレビ番組はプロが作っているので、ちょっと違います)。短く簡潔に要点をまとめ、1つのビデオでは1つのトピックを扱うようにします。
Q:ビデオは自作するべきか、それとも既存のものを選べばよいか。
A:私は、先生が自分でビデオを作るのがベストだと思います。先生と生徒の関係性は独自のもので、そういった背景に配慮しながら情報を伝えることができるからです。生徒がビデオで先生の声を聞き、先生の顔や手書きを見ることは大切だと考えています。生徒たちに、先生が、彼らのためにエネルギーや時間を使っていることも伝わります。もちろん、よい教材があれば、使ってもかまわないでしょう。優れた先生方は、自作教材と一般的な素材を組み合わせています。
講演の最後に日本の教育者へ伝えたいこと?
反転授業は、「教師中心・内容重視(Teacher centered/Content driven)」の教育から、「学習者中心・興味重視(Learner centered/Interest driven)」の教育へと移行していくために利用するツールであって、それ自体が目的ではありません。私自身は、6年ほどかけてその転換を図ってきました。生徒一人ひとりがさらに興味や創造性を循環させていくことが重要なので、このプロセスには終わりというものはありません。
●スピーカー紹介(敬称略)
アーロン・サムズ(Aaron Sams)
2000年から教育に携わり、コロラド州のウッドランドパーク高校、カリフォルニア州ハシエンダハイツのロスアルトス高校で科学教員として教鞭をとる。2009年に数学およひ科学教育部門でプレジデンタル・アワード・フォー・エクセレンス受賞。現在は米国ペンシルバニア州ピッツバークの神学校にてデジタル学習の主任および同州ラトローブのセントビンセント大学非常勤講師。スクリーンキャスト(コンピュータ画面を録画して授業動画を制作する手法)の活用や反転授業の概念に関する講演やワークショップも実施している。
●セミナー概要
タイトル :「反転授業のデザインと評価手法?先駆者に聴く、反転授業の概念と実践事例」
- 日時:5月24日(土)13時から18時
- 場所:東京大学 本郷キャンパス 情報学環・福武ホール
- 主催:東京大学大学院情報学環 反転学習社会連携講座