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共創し学習する新しい組織論

人工生命研究と組織論研究に共通する、「個別性」よりも重要な“物語論”としての「関係性」

ゲスト:株式会社オルタナティヴマシン代表取締役青木竜太、岡瑞起、最高科学責任者池上高志氏 第2回

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 本シリーズでは、2007年の創業時から新しい経営方法を追求してきたダイヤモンドメディア株式会社の武井浩三代表取締役と、イノベーティブで協働的な組織のあり方とその実践について研究を行う宇田川元一氏(埼玉大学 准教授)が、これからの組織とそこに近づく方法について様々な方と語り合う。今回は人工生命(ALife)の研究者集団オルタナティヴ・マシン(Alternative Machine Inc.)の創業者3名を迎え、生命を作るという研究を通して何が見えてくるのか、そこから組織や社会を見るとどのようなことが言えるのかを語り合った。全4回でお届けする。今回はその第2回。

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人工生命研究を組織やコミュニティに応用する──「短期的な最適化」と「長期的な自律の担保」

宇田川(埼玉大学 人文社会科学研究科 准教授):
 先ほどの人工知能との比較、複雑系の系譜にある人工生命という位置づけなど、すごく面白いですね。組織論でいうと、カール・ワイクという研究者が『組織化の社会心理学』という本で複雑系に近い話をしています。組織のシステムというのは、基本的にはタイト・カップリング(組織内での役割や関係性が固定的で変化しづらい状態)になって最適化していくけれど、そうするとシステムとしては脆弱になっていくわけです。それをどうやって安定した状態にしていくのかを、システム論的に考えてみようと。そこでワイクが出したのが、信じつつ疑うという「アンビバレンスを持つ」という話でした。

池上((株式会社オルタナティヴ・マシン[Alternative Machine Inc.]最高科学責任者 / 東京大学大学院 総合文化研究科 教授 理学博士):
 「アンビバレンス」を持つ!

宇田川:
 ええ。ただ現実的には、タイトになった組織が、その逆のルース・カップリングになるということはほとんど起きていないんですよ。例えばロバート・バーゲルマンという研究者はインテルを長年調査して、同社が大成功した後に凋落した現象を「共進化ロックイン」と呼びました。最初は現場サイドの動きで扱う製品をDRAMからCPUにシフトして成功したインテルですが、トップ主導で組織のシステムをどんどんCPUのビジネスに最適化していったことで、CPU以外のものが作れなくなっていったんです(「共進化ロックイン」については、『なぜ新規事業の芽は“合理的”にミドルに摘まれるのか──「共進化ロックイン」の罠』を参照)。その先にあるのは、クリステンセンが提唱した「イノベーションのジレンマ」です。彼は、組織というのはタイトになって硬直化していってしまうものだから、内側で新しいものを作るのは無理だという結論に達しました。それで、外側に出島みたいな組織を作ってイノベーションを起こしていきましょうと言ったんですね。その流れで、クリステンセンと同時期の研究者のチェスブロウは「オープン・イノベーション」、つまりイノベーション・エコシステムを組織の外に作ろうということを提唱しました。

 結局、組織を生命体として考えた場合、それはどうしても硬直化していってしまうものだから、どう打破するか、という話になるんです。

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組織や生命でも同様に起こる「短期的な効率化による罠」

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