大企業には“両利きの人材”はいない──「人材起点」で考えるオープンイノベーション
溝口:
大企業とスタートアップの座組みにおけるオープンイノベーションは、やはりトップの力量次第といった感があります。新しいサービスを開発してドライブしていくためには、ニーズに対して鋭敏な皮膚感覚を持ってサービスを作るミクロ的な視点と、事業の構造と社会的価値を見極め、「ヒト・モノ・カネ」を適切に投入できるマクロ的な視点との両方が必要です。これまでの日本ではその両者が職能を分けて連携し合うことで事業を立ち上げてきましたが、スピード感が求められるアジャイル方式での開発では1人に集約されている方が望ましいでしょう。局面の変化に応じて軌道修正をすることに「覚悟と責任感と知見」を持った人で、さらにマネジメントができなくてはならない。さらに判断するためのデータを取得・分析し、技術者やマーケターと調整する必要があります。
そういう人が大企業や大企業のパートナー企業にいるのかといえば、甚だ疑問です。なぜなら、そういう人は「自分でやれる」ので、組織に属する必要がないんです。日本にいるとしたら、スタートアップでCEOやCOOとして活躍している人ではないでしょうか。実際、ヤフーでは、買収したスタートアップの経営者がそのままヤフー側とのコネクト役として機能していると聞きます。そういう方法もあると思います。