「ソースオブビジネス(収益源となる競合)」が“戦略を定義”する
――今回は、企業が限られた資源の中で新しい市場を創造・開拓できるのか。その際に必要な視点をお聞きできればと思います。
荻野:
以前資生堂のCMOを務められていた音部大輔氏考案の「パーセプションフロー」というマーケティングコミュニケーション設計のフレームワークがあります。そこでは「ソースオブビジネス→根本問題→差別特性→ブランド→購入意向」という流れの中で、消費者の「態度変容」を追っていきます。
荻野:
「ソースオブビジネス」とは、限られた消費者のお財布や時間を、”正しく”競合を設定することで発見し、自社のサービスに注目を集める「源泉」を指します。このとき気をつけるポイントは、競合を「直接競合」として捉えないことです。「カメラメーカー」であれば競合は「カメラメーカー」と認識するのが、直接競合の考え方です。
――「ソースオブビジネス」に関して、もう少し具体的にご説明いただけますか?
荻野:
たとえば、万年筆のソースオブビジネスは他の文房具ではありません。万年筆の8割は男性向けのギフト需要で、予算は5,000円くらい。つまり、ネクタイが万年筆のソースオブビジネスなのです。では、高級アイスクリームのソースオブビジネスは何だと思われますか? おもな購入者は帰宅時間の遅いOLです。
――直接競合ではない……ということは、化粧品でしょうか?
荻野:
正解は、プレミアムビールです。ターゲットである彼女たちは、忙しくて自分のために使える可処分時間が少ない。30分でも、自分を満足させてくれる何かに時間を使いたいという欲求があります。それを叶えるのが高級アイスクリームであり、ソースオブビジネスはプレミアムビールとなります。
荻野 英希(おぎの ひでき)
世界最大手の広告代理店・WPPグループ最大のデジタルエージェンシー、VMLの日本代表およびFICC inc.代表取締役社長。多くのグローバルブランドへ、デジタルマーケティングのコンサルティングサービスを提供している。