未知の発見を阻むバイアス、突破するためのバイアス設定
この時に注意すべきは「バイアスを突破する」ことだという。既存事業で培ってきたノウハウや知見がバイアスとなることで、新しい未知の発見があっても気づかないことも少なくない。とはいえ、外すのはなかなか難しいことから、WHITEでは「外部のバイアスのない人と一緒にやる」「あえてバイアスをつくる」という2つの方法をとるという。特に後者のツールとして、検討市場の外側にいる人たちを可視化し、リサーチの対象を広げる「リサーチレンズ」、出てきた欲求や価値をビジネスのアイデアとする際に用いる「デジタル・トランスフォーメーションレンズ」が紹介された。
小池氏は「リサーチレンズ」について、「顧客など近しい人たちにヒアリングをしたくなるが、新規事業についてはむしろ検討市場外の今のサービスに満足していない人たちにアプローチすることが重要だ。たとえば、飛行機産業の競合として、新幹線などを思い浮かべる人も多いが、ビジネスの出張と捉えればオンライン会議のシステムが該当するだろう。クレジットカードもSNSと同じ承認欲求という側面があるかもしれない。思い込みの枠を外して、顧客や買い手グループ、エクストリームユーザーなどをリサーチし、観察することから新たな発見がある」と説明する。
※リサーチレンズ詳細:小池氏寄稿記事第2回『新規事業で重要な「リ・フレーミング」と「ズラしの意識化」──リサーチレンズによる検討市場の深掘りとは』
そして2つめの「デジタル・トランスフォーメーションレンズ」は、事業サービスを抽象的に捉え、新しい視点・体験価値に活用していくというものだ。たとえば、スマートフォンもAirbnbも抽象化すると同じように「無価値を価値にする」という手段を用いていることに気づく。スマホは電車の中で何もできなかった時間をエンターテイメントやコミュニケーションなどを楽しめるように変えた。また、Airbnbは空室をネットワーク化することで価値に変えた。
「様々なサービスを抽象的に捉え、そこから得た新しい視点を課題や欲求の解決策に活用した時、どのようなものがビジネスとして成り立つのか。デジタル・トランスフォーメーションレンズは、そのためのいわば『視点集』であり、意図的に得た視点をビジネスにぶつけることで、どのような変容がありうるのか、考えるために活用する」と小池氏は語る。
他にWHITEで「未知の発見」のために行なっているものとして、行動観察、半構造化インタビュー、KA法などが簡単に紹介された。
※デジタル・トランスフォーメーションレンズ詳細:小池氏寄稿記事第3回『バーニーのVRIO理論から既存市場をディスラプトする「デジタル・ゲームチェンジ」の方程式を発見する』