宇田川先生がSAPやマクアケと語る、イノベーションの鍵となる「イントラプレナー」に必要なものとは?

Sansan Innovation Project 2019 セミナーレポート Vol.3

 企業内でイノベーションを起こす存在としてイントラプレナー(社内起業家)の存在が重要視されている。しかし、イントラプレナーとして実際に新規事業を起こそうとすると、突き当たる壁も大きい。3月15日に行われた「Sansan Innovation Project 2019」では、Biz/Zineで「イノベーションを生む組織」のコラムを連載する埼玉大学准教授の宇田川 元一 氏が、イントラプレナーを支援する活動をしている株式会社マクアケの 木内 文昭 氏と、SAPジャパン株式会社の大我 猛 氏とともに登壇。イントラプレナーのリアルと、イントラプレナーとして必要なものを聞いた。そのセッションの内容を紹介する。

[公開日]

[講演者] 宇田川 元一 大我 猛 木内 文昭 [取材・構成] フェリックス清香 [写] 和久田 知博 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] 事業開発 イントラプレナー 社内起業家

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イノベーションの阻害要因となるのものは、決して「アイディア不足」ではない

 モデレーターの宇田川氏はイントラプレナーを「新規事業を創る人」という意味合いからもう少し広く、企業の変革者という意味合いで捉えている。講演ではまず、宇田川氏からイントラプレナーがなぜイノベーションの鍵なのかについて、経営戦略論の研究者ロバート・バーゲルマンの研究をひいて説明があった(詳しくは宇田川氏によるBiz/Zineコラム『なぜ新規事業の芽は“合理的”にミドルに摘まれるのか──「共進化ロックイン」の罠』を参照いただきたい)。バーゲルマンはインテル社を研究する中で、DRAMを中心に製造してきた半導体メーカーのインテル社が、シリコンウェハーのCPUへと大きく事業の戦略変換を成し遂げたのは、現場サイドが先にCPUを作り始めたからだと発見した。新しい事業の芽は常に現場で何かに気づき、それをミドル層がすくい上げるところからスタートするのだ。

 しかし現在のスマートフォンには、インテル社のCPUはほとんど使われていない。それは、WindowsのPCにインテル社のCPUという、いわゆるWintel体制の大成功によって、何かアイディアがあってもミドル層が「既存の事業よりもうまくいくのか」という受け取り方をするようになったからである。つまり、イノベーションを起こすためにはアイディアが足りないのが問題なのではなく、アイディアが組織の中で淘汰されないようにする必要があるのだと宇田川氏は説明する。では「アイディアの淘汰環境を生き抜くことに長けた人材」には、どんな条件があるのだろうか。

宇田川 元一埼玉大学大学院 人文社会科学研究科 准教授 宇田川 元一 氏

 パネリストのマクアケ木内氏とSAPの大我氏はイントラプレナーを支援する活動をしているが、自身も企業内で新規事業を立ち上げているイントラプレナー当事者でもある。

 木内氏は、日本最大の支援額を誇るクラウドファンディングのプラットフォームMakuakeを運営する、株式会社マクアケの共同創業者である。Makuakeは資金調達の場というだけでなく、上市前に市場の反応を見るという、テストマーケティングを効率化するプラットフォームとして機能している面があるという。その事業を手がける一方で、2016年からは「Makuake Incubation Studio(MIS)」を立ち上げ、運営をしている。

 その目的は、ユニークな研究開発技術を持っているのにそれを製品に行かせていない企業とともに、製品企画立案から社内で決済を通すための構図づくりや必要なリソースパートナーをマッチングするなどといったことである。

 大我氏は、ドイツを拠点にしたヨーロッパ最大級のソフトウェア企業SAPのチーフ・トランスフォーメーション・オフィサーである。SAPは企業の基幹システムのERP分野においては世界一のシェアを持っている。創業以来40年、ERPを事業の中心に据えてきたが、2010年ごろに事業が頭打ちになり、戦略変換を迫られた。

 そこでSAPが考えたのはデジタル変革の時代に求められるのは、デジタルを使ってどうビジネスを変えていくかだということだ。そこで既存顧客というネットワークがあることや技術という強みを生かして新規事業を追加した。すると、2015年には売り上げの約6割が新規事業になったという。既存事業が微増しているのにも関わらず、である。そのSAPのなかで大我氏はイノベーションを実現するためのオープンな異業種コミュニティ「Business Innovators Network」を手がけている。

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