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育児用品メーカー・ピジョンが抱えるジレンマと解──新規事業チームが“出島で専業”がダメな理由とは?

ゲスト:ピジョン株式会社 山中英子氏、ピジョン ホームプロダクツ株式会社 神谷政博氏

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育児用品メーカーとして高いシェアであるが故に抱えるジレンマ

──そもそも業界を牽引するトップ企業において、新商品開発に課題があったということですが、どのような課題だったのでしょうか?

山中英子氏(ピジョン株式会社 開発本部 デザイン開発部、以下、敬称略)端的に言うと、新商品開発と言いつつ、提案されるものは既存商品のリニューアルばかりだったということなんです。例えば、乳児用おしゃぶりの新商品を考えようとして、「おしゃぶり」という形態もコンセプトも基本的にはそのままといったレベルのものを商品開発と言っていた。次世代おしゃぶりを考えようというのに、そういう話になりがちだったんですね。

 当社は、業界でも高いシェアを占めていますし、その背景には先人たちが積み上げてきた、安心・安全というブランドイメージも大きく寄与しています。ベビー用品業界でのスタンダードを作ってきた、そんな役割を担った会社の一つでもあると思います。いま、逆にそれが足かせになって、既存の商品、サービスを超えるようなものが生み出せなくなっている。そんなジレンマがあったんです。

山中英子ピジョン株式会社 開発本部 デザイン開発部 チーフマネージャー 山中 英子氏

神谷政博氏(ピジョン ホームプロダクツ株式会社 開発部、以下、敬称略):付け加えるなら、現在は業界外からどんどん新規参入してくる市場環境です。そういった企業は、既存のアイデアに縛られていない。今後そういった競合が増えてくるという危機感もありました。

神谷 政博ピジョン ホームプロダクツ株式会社 開発部 部長 神谷 政博氏

山中:そのような背景もあって、三年前から、いま、取り組んでいるプロジェクトを始めたんです。i.labさんに入っていただいたのは二年目からですね。

横田幸信氏(i.lab マネージングディレター、以下、敬称略):ピジョンさんのプロジェクトは、我々にとっても実に興味深いものです。通常、我々コンサルタントには、新規事業、新商品のアイデア出しやそのサポートを頼まれることが多いんです。しかし、ピジョンではそれに加えて、「イノベーションを生み出す仕組み、組織づくり」の改革に動いておられる。とても仕組みづくりにこだわられているな、という印象でした。最近、そういったご相談が増えていて、ピジョンさんはその先を歩まれていたという印象です。

 また、ピジョンさんの経営理念にも関わるのですが、生活者、特に母親、ママに寄り添うということに徹底的にこだわっている。流行り廃りではなく、生活者の視点を一番大事にしている印象です。

村越淳氏(i.lab シニアマネージャー/ プロダクトデザイナー、以下、敬称略)::先程、山中さんから三カ年計画という話があったのですが、通常、三年間、一本のコンセプトでプロジェクトを進めることがほとんどで、まず途中でコンセプトの変更はしない。しかし、ピジョンでは一年目と二年目で大きくコンセプトを変えています。むしろ、一年目の成果をもとに二年目に変更を加え、二年目の成果で現在、三年目のコンセプトに手を入れている最中です。柔軟に変化することでプロジェクトを精緻化している印象なんです。

──なるほど、成熟した企業ゆえのジレンマとそこに対応するプロジェクトだからこそ、柔軟さが求められているということでしょうか。

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