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10年後の生活者を想定したシナリオとテクノロジー──ものづくり企業が“飛び地”に向かうプロセスとは

ゲスト:株式会社LIXIL テクノロジーリサーチ本部 研究戦略部【後編】

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 1つ、2つの新商品、新規事業のアイデアでは大企業という組織は変わらない。社会や業界の大きな変化に対応していくには、10年先を見越した「変化し続けるイノベーティブな組織、仕組み」が必要になってくるはずだ。いま、LIXILが取り組んでいるイノベーションが目指しているのは、まさにその取り組みだといえる。後編では、10年後を見据えた研究開発部門によるイノベーションの具体的なプロセスを公開可能な範囲でお伝えする。

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10年先を見据え、膨大なファクトとロジックを積み重ねる

──前回、LIXILでは10年後の生活者インサイトを探ることから始められたということをお聞きしました。具体的には、どのようにインサイトを探索したのでしょうか?

横田幸信氏(i.lab マネージングディレター、以下、敬称略):10年後の生活者インサイトなので、現在の生活者の目の前の意向に囚われない未来を見据えた想像が重要となり、一方で独りよがりな妄想と思われないような説得力も同時に必要となります。通常、デザイン思考のアプローチでは、生活者へのインタビューを通じてインサイトを発見します。今回のLIXILさんのプロジェクトでは、10年後の生活者インサイトを得るというテーマだったので、デザイン思考のアプローチをそのままは使えない。

 だから、確度の高いトレンド情報やファクトを積み上げて、未来を見据えた想像を行い、生活者の価値観や行動が10年後にどうなっているのかを考えるようにしました。

 例えば、高齢者医療や介護の現場で、「現在、こういう課題がある」といった今起こっているファクト情報に、未来を見据えたメガトレンドとして在宅医療やテレワーク、夫婦共働きがより浸透した社会像を重ね合わせていく。そこから「生活者の日常生活にどんな変化が起きていて、新たな○○という課題が発生しそうだ」というインサイトを発見する。「どうしてそうなるの?」と聞かれたら、今のファクト情報や蓋然性の高いメガトレンドを材料にして、理路整然とその展開シナリオを答えることができ、反論できないレベルまでファクトとロジックを積み上げていくんです。

石田進氏(株式会社LIXIL テクノロジーリサーチ本部 研究戦略部 研究戦略推進グループ):そこまで突き詰めていかないと、社内で話が進まない。「なぜそうなるの?」と聞かれて、説明できなければダメなんです。

本村雅洋氏(株式会社LIXIL テクノロジーリサーチ本部 研究戦略部 部長、以下、敬称略):事業部が取り組む新規事業のアイデアは、当然ながら現在の延長線上のものが中心になる。薄くしました、軽くしました、〇〇を付けました。そのようなフォアキャステキング的なアプローチも重要ですが、コーポレート部門である私たちは、バックキャスト的なアプローチでイノベーションに取り組むために、社内に10年後の世界観を共有しないといけない。

 我々の取り組みでは、「将来こんな風になると思っている、だからこういう事業を考えている」と社内に広めていく。すると他の事業部からも、「だったらこういうモノができる」というアイデアが出てくる。それはジャストアイデアではなく、ファクト、インサイトに基づいたイノベーティブなアイデアになるはずです。

桝泰将氏(株式会社LIXIL テクノロジーリサーチ本部 研究戦略部 研究戦略デザイングループ、以下、敬称略):ファクトに基づくというのが重要で、個人の発想力やインスピレーション、経験をベースにしたものでは、単発のヒットは生まれるかもしれませんが企業の取り組みとしては継続しない。最近ようやくそれではダメなんだ、ファクトとロジックを積み上げて、トライ&エラーを繰り返していくことは重要なんだということが、社内にも浸透してきたと思います。

タイトル桝 泰将氏(株式会社LIXIL テクノロジーリサーチ本部 研究戦略部 研究戦略デザイングループ グループリーダー)
右:本村雅洋氏(株式会社LIXIL テクノロジーリサーチ本部 研究戦略部 部長)

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