起業した会社を潰したあとに、人事になるも課題に直面する
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ 荒金泰史氏(以下、敬称略):小向さんは人事職にしては変わったご経歴をお持ちだと、伺っております。具体的に教えていただけますか。
ヤフー株式会社 小向洋誌氏(以下、敬称略):僕は25歳の時に地元で起業をしたのですが、その会社を派手に潰して結構な借金を抱えてしまったんですね(笑)。「なんとか稼いで返さなきゃ」と仕事を探して、ヤフーへの入社が決まり、28歳で初めて上京しました。
ヤフーでは、まず「Yahoo!ショッピング」の担当部署に配属になりました。僕は背が低くて、身近でなかなかサイズの合う服が手に入らなかったんですけど、ネットで簡単に手に入るようになって。「いかにほしい人の目の前に、ほしいものを置いてあげられるか」といった観点などから、システムやビジネスモデルの仕組みづくりに携われて、たまらなく面白かったですね。
そこから管理職となり、あらためて組織づくりやマネジメントに興味を持ち始めました。というのも、前の会社が潰れた原因は、ほぼほぼ自分のマネジメントの問題だと思っていて。その頃も本を読んで勉強はしていたんですけど、まったく生かすことができていませんでした。ヤフーで再びマネジメント側に回ったことで「やっぱり組織づくりは面白い、もう一度ちゃんと勉強し直して極めたい」と感じたんです。
ちょうどその頃、社長が変わるタイミングで「これからは組織づくり、人事に力を入れていく」と発表していたので、これはいい機会だと思い自ら手を挙げて、2012年4月に人事へ異動しました。
荒金:それからいまに至るまでの6年間ほど、社内の組織開発・人財開発に従事されていますね。
小向:いま振り返ると、異動してから最初の2年くらいは、本当に迷走していました(笑)。貪りつくように本を読み、大学の先生や組織開発のコンサルタントにも会いました。しかし、「なんか良さそうなことを言ってるけど、何を言ってるのかよくわからない」というのが正直な感想でした(笑)。
当時、「組織の関係の質を上げることこそが、組織の成長の第一歩なのだ」という考え方が広まりつつあって。たしかにそうだと思って、社員同士がよりお互いをわかり合えるような機会づくりに励みました。
組織内の人間関係はおそらく良くなったのですが、その結果「何も起きていない」ことに気づいたんです。振り返れば、「社員同士が仲良くなること」を「ビジネスの成果」に結びつけることまでは考えていなかった。「事業のための人事」であるべきなのに、「人事のための人事」になっていたんです。そこで、「事業のための人事とは何か?」を、あらためて考え始めたんです。