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『繁栄のパラドクス 絶望を希望に変えるイノベーションの経済学 』第2章 全文公開【前編】

クレイトン・M クリステンセン 著 / パーパーコリンズ・ジャパン 刊

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市場創造型イノベーション

タイトル図3:市場創造型イノベーションは、外側の円内の顧客がプロダクトを入手出来るようにする。

 市場創造型イノベーションはその名のとおり、新しい市場を創造する。この場合の新しい市場とは、それまでプロダクトが存在しなかった、あるいは存在はしていたが高価すぎて買えなかったか、なんらかの理由で入手できずにいた人たちを対象とした新規の市場を指す。市場創造型イノベーションは、値段が高く複雑なプロダクトを、多くの人が買える手ごろな価格に下げ、多くの人が購入して使用できる入手性の高いプロダクトに変換する。場合によっては、まったく新しいプロダクトのカテゴリーを創造する場合もある。モ・イブラヒムのセルテル社はそれまでは高価だったモバイル通信をシンプルで手ごろなプロダクトにつくり変えて提供し、膨大な数の新規顧客を得た。市場創造型イノベーションはある意味では、それまでは大勢の人が入手できなかったプロダクト/サービスを大衆化したと言える。

 新市場の影響度は、大衆化されているそのイノベーションの特徴によって異なり、自動車を大衆化したイノベーションほどの多大な影響力をすべてのイノベーションがもちうるわけではないが、市場創造型イノベーションのもつ力は他のふたつのイノベーションと比べて大きい。市場創造型イノベーションは、今日の富裕国の経済にとって基盤であり、成長の過程で大勢の人を貧困から救ってきた。

 このタイプのイノベーションは、市場だけでなく雇用も創出する。新しい消費者を伴って新しい市場が生まれると、そのプロダクトの製造、市場化、流通、販売、顧客サービスのためにより多くの人材が必要となるからである。市場創造型イノベーションが創出する雇用には、「ローカル」と「グローバル」の2つがある。

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ローカル雇用とグローバル雇用

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