『WHY BLOCKCHAIN なぜ、ブロックチェーンなのか?』はこれまで語られてきたブロックチェーンの技術的な側面や、ビットコインなど金融の側面ではなく、その本質的な思想である自律分散型の仕組みが社会に何をもたらすのかを語った1冊。
2016年から自社のインディテールでブロックチェーンに取り組み始めたという著者の坪井大輔氏は、かつてインターネットが実現すると考えられていた非中央集権的な仕組みが、今ではGAFAのような中央集権的な組織の台頭により妨げられてしまったと指摘する。そこに破壊的イノベーションをもたらす技術がブロックチェーンなのだという。
本書ではブロックチェーンがどんな社会や組織を生み出し、どういったビジネスを可能にするのかが確かな知見をもとに解説されていく。リーダーのいない組織とは? 自律分散型の社会とはどんな姿をしているのか? トークンはいかにして持続しづらかったコミュニティを成り立たせるのか? 一読すれば、ブロックチェーンがビットコインなどの暗号資産のための技術ではなく、既存の中央集権的な社会を一変させてしまう力を持っていることを理解できるだろう。
特に「第5章 実験例と想定ケース」ではブロックチェーンビジネスのユースケースが紹介されており、そのイメージが掴みやすくなっている。「医薬品の在庫販売プラットフォーム」「テレビ視聴のネットワーク化」「EV充電スタンドのネットワーク化」など、様々な分野でアイデアの実証実験が始まりつつあるそうだ。
坪井氏は今後間違いなくブロックチェーンが社会に大きなインパクトを与えると断言する。本書でその重要性を少しでも認識しておくことで、来るべきときに素早く動き出せるのではないだろうか。
目次
序章 ブロックチェーンのいま
第1章 ITの進化
企業から個人へ
PCと携帯電話、個人に近づくIT
3G通信の時代 ポスト携帯電話時代
4Gとポストスマートフォン
「人の機能」に近づくIT
データ収集装置としてのデバイス
人の機能 ×IoT
5Gは何を変えるか
「四種の神器」とは
レガシー産業に参入していくIT
AmazonGOやメルカリ
ものづくりは足かせ
既存産業とIT
第2章 ブロックチェーンの正体
ブロックチェーンの誕生と4つの技術
ブロックチェーンは「信用」をもたらす
ブロックチェーンの最大の運用例「ビットコイン」
ビットコインブームと「大馬鹿理論」
値上がりする設計
ビットコインは「通貨」になるか
犯人捜しはブロックチェーンの仕事ではない
バンドル/アンバンドル パブリック/プライベートの違い
ブロックチェーンの認知拡大
「仮想通貨派」と「テクノロジー派」
ブロックチェーンは落ち込み知らず
第3章 普及を阻むもの
Whyブロックチェーン?
法律は超えられない
ブロックチェーンに向かないこと
ブロックチェーンはビジネスになっていない
普及を阻むもの
第4章 ブロックチェーンが拓く未来
ブロックチェーンが国家を消す?
自律分散型組織(DAO)とは
スマートコントラクト RPAがあらわすもの
イメージ例としてのEU
組織はヒエラルキーからホラクラシーへ
トークン=仮想通貨ではない
トークンがつくる「社会」
なぜ「国づくり」をやるのか
コミュニティは「同好会」だけにあらず
SDGsとの親和性
DAOにおける「マネージャー役の人間」
経営幹部と現場のギャップ
リアルマネーの代替でよいか
既得権益の強さ
売りが「堅牢性」であること
トラブルゼロと言えるか
第5章 実験例と想定ケース
ケース1医薬品の在庫販売プラットフォーム
ケース2(アイデア)テレビ視聴をネットワーク化する
ケース3 EV充電スタンドをネットワーク化する
EVと日本メーカー
クラウドファンディングとブロックチェーン
情報を仲介するブロックチェーン
台帳を見るビジネス
おわりに
ブロックチェーンは社会インフラ
地域で立ち上げた推進団体
「未来志向」に理解者は少ない
超競争社会の可能性
都市と地方で社会制度を変える
第3レイヤーのエコノミー