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“日本人はチームワークが得意”という常識の嘘 

“The Wisdom of Teams”

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日本でイノベーションが起こらない理由

「真のチーム」というアプローチの不在

 カッツェンバック氏たちが定義するチームのレベルの一番下にあるのが(「えせチーム」をチームとして認めていないので)、「ワーキンググループ」という概念です。これは著しい業績向上のニーズのないグループで、メンバーの交流は、情報やベストプラクティスの交換、視点を共有し個人が自分の責任範囲で目標達成することを支援するような意思決定のために行われるとしています。日本語でいえば委員会のようなものです。

 日本人が得意とする“すり合わせ”を中心としたチームのスタイルはこれです。お互いに自分の責任範囲を持ち、それをやり遂げるために必要なコミュニケーションとしてすり合わせをするわけです。

 齋藤ウィリアム氏の「システムができない」という指摘は、この部分のことです。たとえば、iPhoneと国産スマートフォンではパフォーマンスが違いますが、これは作り方の違いだと言います。サクサクと動くスマートフォンを作ろうと思えば、チームで一から全体をシステムとして作りこんでいく必要があるというわけです。

 さて、冒頭に述べたように「日本でイノベーションが起こらない理由」としてチームの問題があると述べました。そう考える理由は2つあります。

 一つ目の理由は、「真のチームが少ないこと」です。真のチームには高い達成目標を与えるとチーム力が向上し、目標を達成するという好循環があります。チームがないために「高い達成目標」を与えることできず、結果として目標はワーキンググループでも出来そうな「低い達成目標」になってしまっています。これではイノベーションは望めません。

 二つ目の理由は「多様性の問題」です。日本人の考える多様なチームというのは、伊賀さんが言及する「リーダーのもとにいろいろな分野の専門家がいて、リーダーが全体をまとめる」チームです。多様性を実現しようと思えば、一人一人の専門家が自分の専門分野ではリーダーシップをとってチームに貢献しなくてはなりません。受け身では多様性は実現できないのです。

 この2つの点を乗り越えて、イノベーションを実現するためのイメージを持つのに、本書で紹介されている数多くの事例は役に立つでしょう。残念ながら、和書は絶版となっていますが、原書は版を重ねています。イノベーションに取り組む人にとっては原書で読むだけの価値のある本です。

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この記事の著者

好川 哲人(ヨシカワ テツト)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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