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JR西日本がコロナ危機で描いた、鉄道一本足打法からの脱却──現場の暗黙知とデータ活用によるDXとは?

登壇者:西日本旅客鉄道株式会社 喜多岡直孝氏、橋本祐典氏

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 2024年10月30日に開催された「Biz/Zine Day 2024 Autumn」では、JR西日本デジタルソリューション本部から喜多岡直孝氏(西日本旅客鉄道株式会社 デジタルソリューション本部 戦略企画課長)と橋本祐典氏(同WESTER-X事業部課長、株式会社JR西日本イノベーションズ社外取締役)が登壇し、「データ起点の顧客体験と従業員体験の変革」をテーマに講演を行った。コロナ禍という未曾有の危機を経て、いかにしてデジタル戦略を通じた業務改革を推進し、新しいJR西日本の姿を構築してきたのか。その軌跡と今後のビジョンが、データ活用を軸に語られた。本記事では、DXがもたらす同社の変革について、具体的な取り組みとその成果を紐解く。

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未来シナリオから描いた「鉄道一本足打法」からの脱却

 西日本旅客鉄道(以下、JR西日本)は1987年の民営化以降、順調に成長してきた一方で、長期的な課題を多く抱えていた。人口減少や少子高齢化が進行したことで、特に地方エリアでは人財確保が困難な状況が顕著になりつつあったのだ。喜多岡氏は「足元の好調な業績に甘んじ、変化に鈍感だった」と振り返り、環境の変化への対応が遅れていた様を「ゆでガエル」とたとえた。

 この状況を大きく揺るがしたのが、新型コロナウイルスのパンデミックだ。山陽新幹線の利用者数は前年同期比で11%にまで激減し、2020年から2021年にかけて、JR西日本グループはそれぞれ2,000億円、1,000億円超の赤字を計上。経営危機に陥った。以降、鉄道利用者数は徐々に回復しつつあるものの、コロナ前の水準には未だ戻っていない。

 同業他社との比較からも課題が浮き彫りになった。阪急電鉄や東急電鉄など、一部の鉄道会社は2020年度からすでに利益を計上していたのだ。一方、JR西日本は、これまで進めてきたショッピングセンターや駅ナカでの物販・飲食といった多角化事業も、実質的には鉄道利用が前提となっていた。鉄道への依存が想像以上に強かったことを改めて認識したと同氏は話す。

画像を説明するテキストなくても可
JR西日本の投影資料より/クリックすると拡大します

 2020年4月、社長の長谷川一明氏から「コロナ後の社会における新しいJR西日本グループの姿を描くように」というミッションが課された。若手を中心としたチームがすぐに立ち上がり、ワークショップなどを通じ議論が重ねられた。

 不透明な未来を「人口が集中するのか分散するのか」「余暇をリアルで過ごすのかデジタルで過ごすのか」という2つの軸に基づく4象限でシナリオ分析したものの、そこで見えてきたのは、いかなる未来においても鉄道の基礎需要が減少するという厳しい現実だった。

 そこで、従来は鉄道事業や駅の集客力を基軸に事業展開してきたJR西日本だが、今後は移動だけに依存しないビジネスモデルへの転換が不可欠だと結論付けられた。そして、これからの世界ではデジタル化は避けられないとの見解から、その鍵となるのはデータとテクノロジーの徹底活用であると位置付けられた。

 そこでは主に「3つの再構築」に取り組んだが、それぞれに壁も存在したという。

喜多岡直孝
西日本旅客鉄道株式会社 デジタルソリューション本部 戦略企画課長 喜多岡直孝氏

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JR西日本が描く「3つの再構築」とそこに立ちはだかった「3つの壁」とは

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この記事の著者

雨宮 進(アメミヤ ススム)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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