インタビュー カスタマーサクセスの実践知

SaaSは適切で透明性のある価格設定が求められる──価格に転嫁できるカスタマーサクセスの価値とは?

第5回(後編) ゲスト:Repro株式会社 佐々木翼さん、弁護士ドットコム株式会社 岩熊勇斗さん

 日本でもSaaS企業を中心に多くの企業が取り組み始めている顧客との関係構築手法「カスタマーサクセス」。実際にカスタマーサクセスを取り組み始めると突き当たる課題があります。本連載ではその課題を「オンボーディング」「顧客の可視化」「売る」「イベント・コミュニティ運営」「カスタマーマーケティング」の5つに分け、ベルフェイス株式会社の小林泰己氏と先進的に取り組んでいる方の鼎談を通じて、実戦知として紹介していきます。
 今回のテーマは「売る」。Web・アプリケーションのマーケティングプラットフォームのRepro株式会社でカスタマーサクセス部を立ち上げた佐々木翼氏、弁護士ドットコム株式会社のクラウドサイン事業部でカスタマーサクセスを率いる岩熊勇斗氏をゲストに迎えて議論しました。各社の取り組みから話を展開していった前編に続き、後編では、プライシングや値下げ、カスタマーサクセスとセールスの関係について話した内容を紹介します。
※鼎談は2019年9月12日に実施しました。

[公開日]

[語り手] 佐々木 翼 岩熊 勇斗 [聞] 小林 泰己 [取材・構成] フェリックス清香 [写] 和久田 知博 [編] 梶川 元貴(Biz/Zine編集部)

  • ブックマーク
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

日本のSaaS企業が悩む、サービスの“適正価格”

小林泰己氏(ベルフェイス株式会社、以下敬称略):先ほど佐々木さんはプライシングに関して、「適正価格なのか葛藤がある、安価で複雑な価格設定」とおっしゃっていましたよね。

佐々木翼氏(Repro株式会社、以下敬称略):そうですね。最近外資のエンタープライズ系SaaSの方々と話す機会があったのですが、彼らの価格は桁が違いますよね。それに比べて日本のSaaSは安すぎるのかもしれません。

小林:日本のSaaSは確かに安いんですよね。一方で、拡販のためにも高くしてはいけないという考えもあります。お二人の企業では、プライシングは誰がどのように決めているのですか?

岩熊勇斗氏(弁護士ドットコム株式会社、以下敬称略):事業計画を策定する主要メンバーが決めることが多いですね。事業部マネージャー以上の人材から適性を見て選ばれ、部門を横断したプロジェクトとして議論することが多いです。

佐々木:弊社はプロダクトの責任者、セールスといった「売る」に関する責任者、そしてカスタマーサクセスの三者で決めています。プロダクトの責任者は原価を合わせて考え、セールスはその価格で売れるかを考えます。

小林:カスタマーサクセスも含めて議論するのはどういう意図ですか?

佐々木:既存のお客様が買ってくださる可能性があるので、「価格を伝えたときに嫌な雰囲気にならないか」とか、「価値を適正だと感じてもらえるか」ということをお客様視点で考えるためです。また、お客様と話して持ち帰った結果がプロダクトに反映されることが多々ありますが、一方でプロダクト側から「これはオプションで売れるんじゃないか」という意見が出ることもあります。そしてその中には、カスタマーサクセスから見ると「売れるわけないよ」っていうものがあったりするんです。カスタマーサクセスは「機能+オペレーション」で何が解決できるかを考えます。サービスは機能単体で値付けできるものではなく、その判断は、プロダクトの開発側だけでは難しいんです。

岩熊:私もプライシングに参加していますが、佐々木さんが指摘した観点に加え、「この金額を追加で支払う価値を証明できるか」を考えます。いくら分の効果をお客様にもたらすので、価格はこのぐらいが妥当だ、と考えるんです。

小林: カスタマーサクセスの経験とお客様と向き合うときの感覚で、値段が適正かを考えるということですね。

佐々木:お客様から要望をいただいて開発した機能の場合、「費用対効果はこのくらいだと思いますが、ぶっちゃけいくらで買いますか?」ってお客様に聞くこともあります。多くの場合は安めの金額を言われますが、「1円も出せない」と言われるケースもあります。

小林:3万円と言われたものが5万円、10万円で売れることはあるでしょうけれど、1円も出せないと言われたものは、「価値を感じない」というお客様の感覚が正しいのでしょうね。

バックナンバー