セミナーレポート Biz/Zineセミナーレポート

オムロン竹林氏が語る、イノベーションの事業化における「起承転結」──妄想を構想化する「承」型人材とは

特許庁・PwC「オープンイノベーションを活用した新事業創造に資する知財戦略の実践へ向けて」レポート Vol.2

 ニューノーマルと言われる時代に際し、企業におけるイノベーションやデジタル・トランスフォーメーションへの渇望は益々高まるばかりだ。しかし、掛け声ばかりが大きく、ビジネスとして結実できない企業も少なくない。どうしたらイノベーションを現実のものにできるのか、またどのようなアプローチでイノベーションを発想するのか、そして、どのような人材が担うべきなのか。特許庁の委託事業「大企業等によるオープンイノベーションを促進する知財戦略に関する調査研究」の一環で開催されたPwC主催のウェブセミナーにおいて、オムロンで数々の新規事業を牽引し、現在は政府や大学などでも“イノベーションの伝道師”として活躍するオムロン株式会社イノベーション推進本部インキュベーションセンタ長の竹林一氏が講演を行った。

[公開日]

[講演者] 竹林 一 [取材・構成] 伊藤 真美 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] 事業開発 企業戦略 DX パーパス

  • ブックマーク
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

登壇者紹介

  • 竹林 一氏(オムロン株式会社 イノベーション推進本部 インキュベーションセンタ長)

竹林さんによる「イノベーションとは何か」、その出発点

 竹林氏いわく、「イノベーションは関西から起こる」という。理由の1つは「ブラブラしている人が多いこと」。そのために雄花と雌花を媒介するミツバチのように、ユニークな者同士を引き合わせる人が多いからだという。そしてもう1つは、「ものの見方が違うこと」。既にあるステージで闘うとなれば、先行し大規模な東京の企業に勝てないのが必然で、それ故に“新しいステージ”をつくりにいくというわけだ。

 そういう竹林氏もその一人だろう。人の輪を広げてそこから新しいビジネスモデルを生み出してきた。現在はオムロンのインキュベーションセンタ長として「イノベーションが生まれる仕組みや環境づくり」に取り組み、政府関係の施策や京都の大学での研究に参加するなどイノベーションの伝道師として活躍している。

 そんな竹林氏が重視するのは「イノベーション」の本質的な意味を捉えることだという。そもそも「イノベーション」とは何か。1911年に経済学者のヨーゼフ・シュンペーターが自著のなかで触れており、「組織や製造プロセスなども含めて、それまでと異なる仕方で新結合すること」と定義している。たとえば、「『日本を代表する和菓子メーカー』が国産小豆から外国産に変えても味が変わらない」というのは、原材料確保から技術まで卓越した工夫があったからであり、これもまたイノベーションというわけだ。

 「イノベーションとは、知財や新規事業だけではない。たとえば、心理的に安全な組織をつくり、そこから新しい製品や製造方法が生み出されたら、組織づくりそのものもイノベーションだ。だから、人事であろうが技術であろうが、誰でもイノベーションの当事者となりうる。そもそも『馬車から車をつくる』など、誰もができるはずがない。“あなたにとってのイノベーションが何か”を考えることが重要なのだ」と竹林氏は語る。

 なおオムロンでは創業時から、「ソーシャルニーズの創造」「社会的課題の解決」とイノベーションを定義しており、「顧客の困りごとを解決する」と明確にしている。たとえば、オムロンが手掛けた「全自動感応式信号機」も、交通渋滞という社会課題の解決が発想の起点だ。目指すべきイノベーションを明確化することで、社員は何をすべきかを理解し、仕事に邁進できるというわけだ。

 一方、「イノベーションせよ」という声がけだけでは、誰も何をすればいいのかがわからず、時には必要以上の変化を起こそうとして、ハレーションを起こして失敗する。経営層のイノベーションの定義こそが、組織のイノベーションの起点というわけだ。

 さらに「オープンイノベーション」というと一見難解に見える。しかし、定義は「組織の内部と外部が連携して新しい価値を生み出すこと」であり、新結合という意味ではイノベーションと変わらない。

バックナンバー