上場は“新横浜駅”のようなもの
嶺井 政人氏(グロース・キャピタル株式会社 代表取締役社長、以下敬称略):さっそくですが、上場前と上場後で、成長を実現する上での違いを感じたことはありますか?
髙島 宏平氏(オイシックス・ラ・大地株式会社 代表取締役社長、以下敬称略)おそらく会社によって捉え方が違う気がします。当社は上場までが結構長かったこともあり、上場する前から半分上場企業のようなところがありました。監査法人が入って久しいし、社外取締役を入れて久しい。そのため、上場が他の会社ほどビッグイベントではなかったという認識でいます。僕らはよく「上場は“新横浜駅”みたいなもの」と言っていて。
嶺井:え、新横浜駅ですか?
髙島:大阪から東京、もしくは東京から大阪でもいいのですが、新横浜駅はその途中にあるので、だいたい停まる。ですが、それ以上のものではないですよね。上場もそれと同じ。僕らはもともとビッグイベントと捉えていませんでした。皆さんが捉えるほど前と後という感じではなかったんです。
嶺井:なるほど。
髙島:そんな中でも最初に変化を感じたのは「人材」です。オイシックスのことを“ちゃんとした会社”だと思ってくださる人が増えたんです。それは採用においてはある意味ではマイナスの側面もありました。今もそうですが、上場しても当社はまだ会社として、成熟企業のようには“ちゃんと”してはいない。ちゃんとしている人がメインになって力を発揮するのは、もっとずっと後のフェーズでいいと思っていて。僕らが求めているのは、ある意味で“ちゃんとしていない人”なんです。
例えば当社は今、産休育休を取った女性社員の復職率がほぼ100%です。扱っている商材の性格上、母親になることが仕事に活きやすい面もあり、出産後も社員がどんどん戻ってきてくれる。そういう側面を見て「いい会社」と思うようなんです。
嶺井:私も今、「いい会社」だなと思って聞いていましたが。
髙島:実際は、早期に戻ってもらわないと事業が回らないという側面もあります。それくらいに、ある意味ではまだまだ「未熟な会社」ということです。なのに、制度がすごく整った成熟した「いい会社」のように思われてしまう。その辺りが最初は難しかったですね。