選ばれ続けるために不可欠な「左脳&右脳」のアプローチ
「選ばれ続ける」ために南雲氏が重視するのが、冒頭で紹介した「左脳&右脳」両輪でのアプローチだ。論理や思考による左脳的判断は意思決定にやや時間がかかるが、直感や感情、勘などによる右脳的判断は、意思決定スピードが速い。つまり、意思決定には、左脳に働きかける記憶情報、右脳に働きかける感情情報の両方が関わっており、それぞれに働きかける施策が必要というわけだ。そして、さらに深く記憶に刻むためには、実際に手で触れたり肌で感じたりという、店舗での“五感の体験”が重要であり、顧客体験設計にその部分を組み込むことを意識しているという。
具体的には、左脳に対してはPODとパーパスを刷り込み、おいしさを頭で理解させることが大切になる。たとえば、「すべての店で粉から作る、だから他よりもちもちした食感が生まれ、圧倒的においしい」「日々鍛錬している製麺所の麺職人がうどんを作る」などロジックに訴える強い戦略メッセージが有効だ。一方、右脳に対しては直感的なおいしさや“フリークエンシー(接触頻度)”を高めることで訴求していく。「シズル感たっぷりのおいしそうなうどん」や「おいしそうな食べっぷり」、「ライブ感のある厨房で湯気や音で五感に訴えること」、「思わず手が伸びる商品陳列」など店舗の様子、五感に訴えるクリエイティブも重要だ。そして、実際の店舗では、それを深く脳に刻み込むような五感に触れる顧客体験でリピート率を高めることができる。
施策の戦術修正を目的に“ほぼリアルタイム”の短期データ活用を実施
こうした施策の成果やビジネスの状況を掴むために、丸亀製麺は短期・中期・長期で様々なデータを可視化し、全社での共有を行っている。
まず短期的には、当日・日次・週次でデータの取りまとめを行っているという。当日は2時間ごとの売上フラッシュレポートが店舗別・エリア別・全体について作成され、全社で共有される。日次では翌朝8時に、1日の売上や昨年比などの基本的な情報から、利益率や人件費率、客単価などあらゆるKPIが記載された「売上レポート」が共有され、同日10時には加えて主要商品・主要施策について累計や商品構成別、時間帯別など細かくBIで分析された「マーケティングレポート」が共有される。
週次では、社長や他部署を含めてマーケティング戦略会議を実施しており、各種数値レポートと当月見込み修正・予測、次月以降の施策のアップデートなどを共有。代理店ともマーケティング戦略会議で数値を共有し、半日かけて次月以降の戦術や、効果が低い場合はコンティンジェンシープラン立案などを行っている。
「なにか違和感が生じたら、そこをドリルダウンして確認し、詳細や傾向を見に行く。必要に応じて、エリアの担当者や店長とミーティングを持つことも多い。毎日データを見ることで異常値に気づきやすく、ミーティングをクイックに行うことで、早急な意思決定も可能になる」(南雲氏)