コーセーは、量子コンピュータと従来型のコンピュータを組み合わせたハイブリッド型アルゴリズムにより、高速に動作する化粧品の処方自動生成システムを開発した。
同システムの適用例として、角栓除去能の高さを目標品質としたクレンジングオイル処方を自動生成したところ、安全に使用できる条件を満たしながら、これまでの一般的な処方よりも高い角栓除去能をもつ処方が得られたという。
今後は、他の剤型など適用範囲を広げていくとしている。なお、同アルゴリズムについては、関連する2件の特許を出願済みだという。
研究の概要
量子コンピュータを用いて、目標品質に最適な化粧品処方を高速に自動生成させることができるアルゴリズムの開発を試みた。また、開発したアルゴリズムの適用例として、角栓除去能の高さを品質指標としたクレンジング処方の自動生成と評価を実施した。
量子コンピュータと従来型のコンピュータの強みを生かしたハイブリッド型アルゴリズムの開発
現時点では、量子コンピュータ単体で計算される解には精度面で課題が残る一方、従来型のコンピュータでは莫大な候補の中から解を探すのに多くの時間を要するという。そこで、同社は量子コンピュータと従来型のコンピュータのそれぞれの利点を組み合わせたハイブリッド型の独自アルゴリズムを開発。同アルゴリズムは、量子コンピュータの強みである高速な演算能力を活かし、無数にある原料の組み合わせの探索領域を目標品質に合わせて高速で絞り込み、続いて、従来型のコンピュータを用いて絞り込んだ中で、目標品質に最適な処方を正確に生成させることができるとしている。
これにより、これまでは実用的な時間では計算が困難であった自動処方生成を、量子コンピューティング技術を活用することで実現できるようになったと述べている。
適用例:角栓除去能に優れたクレンジングオイル処方の設計
開発した処方自動生成システムの適用例として、角栓除去能に優れたクレンジングオイル処方の自動生成を試みた。具体的には、角栓を溶解させる物性値を角栓除去能として目標品質に設定し、安全に使える原料配合量を条件として、クレンジングオイル処方の自動生成を実施したとしている。
その結果、自動生成した処方はこれまでの一般的な処方よりも高い角栓除去能を示したという。今回のクレンジングオイル処方の自動生成において、処理に要した時間は数秒。量子コンピュータを用いないアルゴリズムと比較して、約900分の1に短縮できたという。
同研究により、量子コンピューティング技術を応用することで、化粧品処方を高速で自動生成する実用性と将来性を実証。同社では、今後も継続して量子コンピューティング技術の可能性を探索するとともに、一人ひとりのユーザーが求める品質に合わせた処方開発サービスなど、市場価値提案を検討していくと述べている。