「フック」と「ロック」で“競合優位性”を見出す
前回は、「バリューデザインシンタックス(VDS)」における「顧客・課題・価値」のコンセプトデザインについてレポートした。次に堀雅彦氏(以下、堀氏)が解説するのは、「戦略」と「仕組み」のデザインについてだ。このパートでは、「これなら勝てる」という確証と、「価値と戦略は作れる」という確証、2つの確証を作ることを目指す。
まずは、“勝てる”という確証。これは、「競合優位性」を見出すことで作ることができるという。どう作ればよいのか。
堀氏によれば、競合優位性は「フック=選ばれる理由」と「ロック=選ばれ続ける理由」の2つから成る。ビジネスはただ事業化するだけではなく、持続的に続くものでなければならないため、どちらか一方だけでなく両方を言語化できる必要があるという。特に、後者が抜け落ちてしまうケースが多いようだ。
「フック」とは、言うなれば「競合や代替品を利用しているユーザーが私たちのサービスを使い始める理由」のこと。たとえば、圧倒的に使いやすい、速い、安いなどの「利便性優位」や、世界観、物語、人格への共感から生まれる「感情優位」がそれに当たるという。
「ロック」とは、「代替・競合品にユーザーを奪われない、私たちのサービスを使い続けてもらう理由」のこと。これには、「ユーザーがサービスを選び続けてくれる理由」、そして「競合/代替/後発に対しての持続的な競合優位性」の2つの側面があると堀氏は説明する。
ユーザーがサービスを使い続ける理由は、そのサービスから離れられない、あるいは離れたくないからだ。そのサービスが「誰よりも自分のことを理解している」「過去の利用の蓄積がある」、または「サービスに特別な感情がある」などといった要因が考えられる。
そして、競合/代替/後発に対しての持続的な競合優位性とは、「マネしたくてもできない」「マネしても追いつけない」「マネしようと思わない」といった要因から確立される。特別な技術やアセット、ノウハウが必要である、既に市場の“顔”となっている、市場がニッチすぎるなどといった状態を実現できれば、まさに持続的な競合優位性があると言えるようになるだろう。