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事業創造のためのカスタマージャーニー

御社の事業戦略は、「顧客体験のデザイン」を重視していますか?

後編:CJを事業戦略に取り込んでいく「UX Strategy」

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全社でリアルタイムに共有する「フロー型CJ」への移行

――前回(中編)でお話いただいたようにカスタマージャーニー(以下、CJ)を活用していくにあたって、企業にとって必要なことは何でしょうか。

加藤:
 CJは、企業のサービスモデル、マーケティングモデルそのものなので、カスタマージャーニーマップ(以下、CJM)として可視化して、全社的に共有することが重要だと思います。アメックスはジャーニーの全体像をどの部署でも共有して、自分たちの部署との関わり合いをジャーニーのなかで認識しているようなんですね。

 営業、サービス、マーケティングが、顧客に対して、よりワン・ツー・ワンになっていくとすると、1つの情報を共有して、CJをもとに社内教育をしていくというアプローチが今後より重要になっていくと思っています。

長谷川:
 そうですね。加えて言うならば、全ての企業活動をサービスとしてとらえる「サービス・ドミナント・ロジック(S-Dロジック)」という概念に企業がシフトしていくことがキーになると思います。つまり、顧客が製品・サービスを利用する上での「使用価値」に着目し、この価値をいかに上げるかを経営課題とするわけです。

グッズ・ドミナント・ロジックとサービス・ドミナント・ロジック図1. グッズ・ドミナント・ロジックとサービス・ドミナント・ロジック
※参照元: http://sdlogic.net/

 「MailChimp」という無料から使えるメール配信サービスを提供する企業が、それを面白いほど体現しています。企業規模がそれほど大きくないからできるのですが、顧客データベースをEvernoteで作っているんです。

MailChimp: http://mailchimp.com/ 

 CJだけでなく、ペルソナや顧客価値の発見、顧客関連の情報が全部Evernoteに書かれる。セールス、商品開発、アフターサポート、CEOなど、全部門の人がこの顧客ノートを共有する。アフターサポートにクレームの電話がかかってきたら、このセグメントの顧客がこういう不満を持っている、と顧客ノートに書き込む。それを、商品開発やデザイン部門の人が見て改善に生かす。きちんとした分析結果だけではなく走り書きのものも含めて、全てこのノートに顧客情報を貯めていくわけです。そういうあり方が、ほんとうに顧客中心の組織といえるのだと思いました。

 これは、完成形ではなく、常にアップデートされるCJを全員でメンテナンスしながらみんなで活用していく「フロー型のCJ」ですね。そのためのツールとしてみんながアクセス・書き込みできることを重要な選択基準と考えたら、Evernoteになったそうです。

加藤:
 「フロー型のCJ」というのは今後、広まってきそうですね。

長谷川:
 貯め込むのを待っていると、タイムラグもあるし分析にも時間がかかりますが、多少荒削りであっても、それぞれが関与して同じライブデータを見ていくことは、今後、IT活用の1つとして重要になっていくと思います。

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