SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

おすすめの講座

組織戦略としてのデータとCX

“丸投げ”により空洞化するDXを脱するには──データよりも重要な世界観、Chat GPT時代の人材

EPAM Systems Japan 高橋宏氏 × beBit 藤井保文氏

  • Facebook
  • Twitter
  • Pocket

 DXに必要なのは「ビジネス」「テクノロジー」「UX」をオーケストラの指揮者のように動かすこと──。そう主張するのは「UXファースト・エンジニアリング」という概念を打ち出した株式会社ビービットで執行役員CCOを務める藤井保文氏と、EPAM Systems Japan合同会社のビジネスヘッドを務める高橋宏氏だ。日本企業がDXで直面している課題、データやUXとの関係、今話題の生成AIとUXの関係などについて、両氏が語り尽くす。

  • Facebook
  • Twitter
  • Pocket

日本企業のDXは欧米から15年、アジア先進国から10年近く遅れている

──DXという言葉を聞かない日はないですが、一方でDXに苦戦している企業は多いように感じます。日本のDXの現状をどう捉えていますか。

高橋宏氏(以下、高橋):私は世界中のさまざまな業種の企業へシステムやアプリケーション開発支援を行っているEPAM Systems(以下、EPAM)の日本法人でビジネスヘッドをしています。EPAMは現在、50以上の国・地域で事業を展開しており、従業員は6万名以上、そのうちエンジニアやデザイナー、コンサルタントは合わせて5万3,900名以上の人材を抱えています。

 自身や自社の経験から、日本のDXは欧米の先進企業から15年、アジアの先進企業から10年遅れていると考えています。その原因の際たるものは「経営層のデジタルへの理解不足」です。これまではITを重視しない経営でもどうにかなっていたけれど、今になってそれが重くのしかかっている。

 現代の企業では、DXが中期経営計画に必ず記載される大きな経営イシューになっており、取り組まざるを得ない。ではどうするのか。コンサルタントやITベンダーに頼るわけです。しかしDXに関する企画提案を受けても、取捨選択ができるほどの知識や経験が経営層にまだまだ少ないように思います。

 日本企業は人材流動性が低いこともあって、現場でDXをしっかり推進できる人材もあまり多くありません。その結果、コンサルタントやベンダーのパッケージングされた提案がすごく魅力的に感じる。このような構造から多くの日本企業のDXが欧米、アジアの先進国に遅れをとり、直近でもさらに大きな差が開いている[1]理由になっています。

藤井保文氏(以下、藤井):海外のDXでは、例えばナイキは経営者が変わって一気にデジタル化が進んでいる好例ですよね。

DXを“丸投げ”してはいけない理由

──経営レベル、現場レベルともに「DX人材」が不足しているということでしょうか。とはいえDX推進が必須であれば、ある程度社外に頼らざるを得ないですよね。その場合に考えるべきことはありますか。

藤井:DXを外部に依存せざるを得ない状況で起こるのは、支援企業1社のみにDX戦略や推進を委ねてしまうことで起こるリスクです。

 そもそも、DXには「ビジネス」「テクノロジー」「UX」の3つの観点が必要で、この3つのバランスを取りつつ、それぞれの観点から戦略を考え、実行していくことが必要です。

 しかしDXを丸投げに近い状態で外部に頼ってしまうと、3つのうちのどれか、多くの場合はビジネスかテクノロジーに比重が置かれ、他がサブになってしまうリスクがあります。というのも、現実的に「ビジネス」「テクノロジー」「UX」のすべてに強いベンダーなどはほとんどいないからです。

 従来のSIerはシステムの要件を先に決めてからサービスを作るので、ビジネスやUXが苦手な場合が多いですし、コンサルはビジネスが得意かもしれませんがUXやテクノロジーは苦手な場合も多い。当然ながら個社ごとに細かい点は異なるにせよ、「ビジネス」「テクノロジー」「UX」のどの領域も強く、バランスが取れている支援企業は存在しないと思ったほうがいい。

画像を説明するテキストなくても可
クリックすると拡大します

高橋:藤井さんのおっしゃる通りですね。発注側は、オーケストラの指揮者のように、3つの観点を統合しながら推進しなければいけません。「UXなら◯◯にお願いしよう」「テクノロジーは■■だ」とベンダーを選定し、それぞれのバランスを整えながらサービスを開発する。発注側にはそういった能力が必要でしょう。

 我々ベンダー側にしても、自分たちの強み・弱みを理解し、クライアントの課題に対して「こちらは対応できるけど、あちらは難しいので、仲間を探しましょう」と進言することが、DXの成功につながるでしょう。


[1]World Digital Competitiveness Ranking 2022」(IMD:国際経営開発研究所)

会員登録無料すると、続きをお読みいただけます

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

次のページ
ハードウェア中心のものづくりから、デジタルプロダクトづくりへ

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • Twitter
  • Pocket
組織戦略としてのデータとCX連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

納富 隼平(ノウトミ ジュンペイ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

  • Facebook
  • Twitter
  • Pocket

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング