正しいデータの使い方を“していない”と気づくのが、データドリブン経営の最初の一歩
──経営戦略や事業計画と現場の実行をデータでつなぐというお話でした。関連して、樫田さんは「データドリブン経営」をどう定義されますか。
データドリブン経営というと、「Contents(どういったデータを見るのか)」という話が主眼になりがちですが、「Distribution(情報流通の方法)」がより重要かなと思います。会議やチャットツールなど、社内の日常的な情報経路をハックするような、地道なことが効果を発揮します。「うちも営業成績の公開や報告会をしている」という企業の方も多いと思いますが、それとは少し次元が異なります。数字を中心に議論が展開していることが重要です。
何かを改善するための週次ミーティングが設定されたとして、まず改善するべきものの要素をどう分解するのが妥当なのかをデータで見ます。そして、毎週の変化を見るために、週次でデータを取得する仕組みを作ります。そして、その数値を追求すれば、チームのゴールが達成できるような数値目標をチームで掲げます。
これらの一連の動きが「データを見て思考し行動するべきだ」という気運を作っていきます。数値を決め、数値について議論し、数値を追求する。これを繰り返すうちに、組織にデータドリブンな思考が浸透しはじめます。
一つ例を挙げてみます。メルカリは機能開発チームを中心として、データドリブンな文化がある会社です。それは別事業である「メルペイ」のチームも同様で、サービスやプロダクトの改善といったユーザー目線でのデータ分析を行っていました。ところが、メルペイは事業構造上、プロダクト開発チームだけでなく営業チームも存在する。あるとき営業チームと話す機会を得て、気づいたことがありました。
どういった店舗にサービスを導入してもらうか、そのためにどう営業するかについての指針はプロダクトチームに比べて、データドリブンではなかったのです。これは同じ組織内でもチームごとに文化が異なることの実例と言えるでしょう。メルペイはアプリの使いやすさだけでなく、どこで決済に用いられるかが事業上の大きなポイントでした。その部分がデータドリブンでなければ、片手落ちということになります。
もともと、ユーザー数やアクティブ率などの、ユーザー側の数値は多く持っていたのですが、加盟店や営業についてはそもそもデータがあまり上がってきていませんでした。実際にデータで見てみると、加盟店の戦略には大きく改善の余地があった。よりビジネスにとってインパクトの大きい加盟店の開拓戦略が浮かび上がってきて、経営陣もデータを元にそれを理解をするようになっていたのです。