2026年7月9日、A.T.カーニーは地政学を経営戦略へ統合するための経営体制に関する論考「地政学に向き合う経営の再構築」を公開した。本論考では、従来のグローバル化を前提とした経営環境が急速に変質し、地域の分断、貿易制限、紛争の長期化が常態化するなかで、地政学を危機時のみの対応ではなく平時から組み込む経営能力として重視すべきであると強調した。
The Conference Boardによると、世界のCEOの76%が地政学的緊張を背景に自社のビジネスモデルを再評価しているという。IMFの試算では貿易障壁上昇などにより世界経済の産出が最大7,400億ドル減少するリスクも提起された。本稿は、不確実性が例外でなく常態となる環境で、CEOをはじめ経営陣は地政学を戦略・業務計画に継続的に組み込む必要があると指摘している。

加えて、地政学的なリスク対応は多くの企業でリスク委員会や渉外、調達、戦略、コミュニケーション部門、臨時タスクフォース等に分散し、組織内での断片化が進んでいると分析している。Fortune 500企業でさえ専任の地政学機能がないケースが一般的であることから、「地政学インテリジェンス」に明確なオーナーや責任主体がないと、重要な動向を見逃すリスクや意思決定への落とし込みの遅延につながるとした。
本論考では、地政学的課題を経営の中枢で扱うための6つの基本要素(インテリジェンスの事業直結・経営陣によるオーナーシップ・優先順位の仕組み・エクスポージャーのモニタリング・リスク/機会の両面配慮・責任主体の明確化)と、6つの機能(インテリジェンス統合、優先順位推進、可視性向上、政府対応統合、組織柔軟性、フィードバックループ)を取りまとめている。

具体的には、専任の地政学チームが取締役会やCEO、事業部門と密接に連携し、外部情報と自社の事業実情との接続、重要市場・サプライヤー・政策変更への着目、迅速な対応強化などを担うべきだと提唱した。このチームを新たなサイロにせず、既存の経営プロセスに組み込むことで、単なるリスク管理だけでなく競争優位につなげることができるとまとめている。
地政学環境が今後も不確実性を増す中で、経営企画部門やビジネスリーダーは、断片的な対応から統合的なリーダーシップへの転換と、そのための実務体制強化が求められている。
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