2026年6月11日、A.T.カーニーは「インド化学品サプライチェーンのレジリエンスを高める」と題した論考を発表した。本稿では、インド化学品業界のサプライチェーン再設計について、China Plus Oneの台頭、サステナビリティ重視の高まり、デジタル化とイノベーション推進という3つの潮流を軸に考察している。
インドの化学品産業は、経済成長や所得水準の上昇、輸出市場向け供給のコスト競争力、豊富な人材基盤などを背景に拡大が続く。一方、同時にグローバル・バリューチェーンと密接に結び付いているがゆえに、COVID-19パンデミックや地政学リスク、気候問題など外部ショックの影響を受けやすい構造にある。
特にChina Plus One戦略の台頭により、供給・生産拠点の分散が進んでいる。中国集中からインドへの移行が強まる中、約1,000工場の閉鎖・移転(例:2016年江蘇開発計画下での環境規制強化)は、特定地域への依存リスクを浮き彫りにした。

サステナビリティ要求の強化も圧力を増す。2026年にEUで導入予定のCarbon Border Adjustment Mechanism(CBAM)は、輸入化学品の炭素証書取得を義務付ける。こうした中、サプライチェーン全体での炭素フットプリント管理・削減が必須になりつつある。SABICの輸送モード見直しや、インドのDCM Shriramが再エネ調達で模索するように、エネルギー選択や物流網再設計も喫緊の課題となっている。
さらに、サプライチェーン業務でデジタル技術の活用が拡大する。デジタルツインやIoT、GPS追跡、高度分析の活用による可視性・意思決定力向上が求められており、サプライチェーン全体でデータ駆動型の意思決定能力が企業競争力を左右する。
A.T.カーニーは、今後のサプライチェーン設計の要諦として、①事業との統合戦略、②分散型かつ柔軟なネットワーク、③計画能力の強化、④パートナーとの信頼関係構築、⑤デジタル化の深化、⑥変革を支える組織づくりの6点を挙げる。従来型の効率・コスト重視に加え、不確実性に備える「Just in Case」型への転換、パートナーとの情報共有や実践的な人材育成投資が不可欠であると提言している。

本論考は、インド化学品業界だけでなく、日本企業が自社のサプライチェーン強靭化や新規事業の戦略策定を進める上でも示唆を与えるものといえる。
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