かつての日本では「ヒト」の価値がもっと高かった
「かつての日本には、全ての人が価値を創造し得るという発想、そしてそれぞれの立場からみんなが経営に貢献し、成果も比較的平等に配分するという理念が根付いていた」と、岩尾氏は自身の考えを示す。当時は、経営知識が広く共有され、全ての人が生産活動の主役となっており、報酬が比較的平等に配分される社会があったのだという。実際、当時の新入社員と社長の給与格差は、平均すると10倍以内だったという。これこそが、TQC(全社的品質管理)やカイゼンの本質だったと同氏は語る。
そうしたかつての社会では、上司は部下の価値創造を助けるべく、障壁を取り除く役割を果たし、顧客は良いものを買い叩かずに正規の値段で買い、経営の原資を提供する役割を担っていたのだとも。そして経営者は、次の経営者を探す役割を果たし、従業員は、責任を持って価値の創造を行う役割を担っていたという。