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「新規事業提案制度」事務局運営のリアル

なぜリコーの「TRIBUS」は全社を巻き込み続けられるのか──事例とともに紐解くプログラム継続の秘訣

第1回 ゲスト:リコー TRIBUS 森久泰二郎氏(後編)

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部門のミッシングピースのためだけではない協業のあり方

鈴木:現在、TRIBUSを主導するメンバーは何人いらっしゃるのでしょうか。また、これまでに採択された事業についても教えてください。

森久:常に変動はありますが兼任のメンバーも含めて約6~7名です。それぞれ社内プログラム、スタートアッププログラム、採択後のチームインキュベーション、ポッドキャストの運営、神奈川県海老名市に設置している共創空間「TRIBUSスタジオ」の運営などに関わっています。

 TRIBUSではこれまで、16事業が最終採択されました。代表的な事例に、インド柄のアクティブウェアの製造販売を通し、女性のエンパワーメント、インドの農村部に住む女性の雇用創出を目指す「RANGORIE」のプロジェクトがあります。最初はオンラインでの展開でしたが、リアルな場所での販売を開始しました(ブランドは合同会社For DiLに譲渡[4])。先ほど申し上げたTRIBUSスタジオにも、同ブランドの商品が展示されていて、その関連でスタジオには、海老名市民の方もご利用いただけるヨガスペースが併設されています。

 また、クラウドファンディングを利用したプロジェクトも出てきました。これはエンジニアが起案した小型ハンディプロジェクター「RICOH Image Pointer」というプロダクトで、プログラムでリコーとして初めてクラウドファンディングを利用して価値検証を行い[5]、最終的に商品化されました。

鈴木:リコーはエンジニアが多い企業です。社内のエンジニアが自ら手がけたプロジェクトが、こうして社会に役立つ形で実を結ぶのは素晴らしい循環ですね。

森久:ありがとうございます、他にも様々なバックグラウンドを持った事業があります。360度どこからでも見える立体裸眼投影装置「brightvox」のプロジェクトは、カーブアウトして株式会社ブライトヴォックスとして独立し、外部資金を活用しながら現在事業を進めています。実は、同プロジェクトは最初に社内提案制度に応募したときは初期の選考で非採択となっていたのですが、次の機会に再応募し事業化まで至り、ある意味“リベンジ組”として大成功しています。

 その他、聴覚障害がある人のオンラインミーティング参加をアシストするツール「Pekoe」は、チーム内に耳が不自由な当事者の方が参画しています。こちらは総務省の「情報アクセシビリティ好事例2023」に選出[6]され、障害者雇用を実施している企業も活用いただく成果を出しています。さらに最近では、リコーグループの販売会社からの提案も増えてきており、中小企業の向けの事業承継の課題解決を意図した、営業出身の方からの提案も採択されています。

鈴木:スタートアップとの共創事例は、契約上まだ詳細をお伝えできないこともあると思いますが、可能な範囲で教えていただけると嬉しいです。

森久:2024年度の応募が締め切られたばかりで、170社ほどの応募がありました。これまで累計応募数は約800社に達し、シード期からシリーズCまで、幅広いステージの企業が参加しています。最近目立つケースとして、TRIBUSで過去に採択された企業が、他のスタートアップに「TRIBUSはいいよ」と紹介してくださり応募に繋がることがありますね。

 具体的な共創事例としては、KBE株式会社との、AIを活用したマネジメントのデジタル化の共同開発プロジェクト[7]、株式会社スマートショッピングとの製造業の中小企業向け在庫管理パッケージプロジェクト[8]などがあります。

 株式会社クリエ・ジャパンは、お客様ごとに最適化された動画を生成する技術を持っていました。そこでリコージャパンの販売会社と協力し、ダイレクトメールの集客効果を高めるプロジェクト[9]をを進めたところ、先進的なダイレクトメールの手法として「日本DM大賞」で入賞しました[10]

 また、部門のミッシングピースを埋めるための協業を前提とせず、スタートアップの成長を支援する形でもTRIBUSは機能しています。大阪のWithMidwife社は、助産師のネットワークを活用した健康や子育てに関する相談サービスを提供する企業です。TRIBUSを活用し、社員を対象に大規模な実証実験を行い[11]、その結果、事業が大きく成長しています。

鈴木:TRIBUSに応募してくる企業の中には、既にリコーの一部門と連携を始めているケースもあるのでしょうか。

森久:はい、その部門の担当者が、TRIBUSに応募するよう促すこともあり、応募が採択されると、さらにリコーの他部門との連携が広がるということもあります。このような形で、協業の可能性が広がるのは非常におもしろいと感じています。


[4] 株式会社リコー「RANGORIE(ランゴリー)のブランド譲渡に関するお知らせ

[5] 株式会社リコー「リコー、「RICOH Image Pointer」のクラウドファンディングを開始~手のひらサイズでコードレス、どんな場面でもその場で映像を共有~

[6] 株式会社リコー「「Pekoe(ペコ)」、総務省の「情報アクセシビリティ好事例2023」に選出

[7] TRIBUS「リコー、東工大発ベンチャーと共創で、AIツールを活用した「マネジメントのデジタル化」を開始~リコー社内の本番データを元に、メンバーのコンディションを計測する独自スコアを開発~

[8] 株式会社スマートショッピング「【スマートショッピング】リコーアクセラレータープログラムTRIBUS 2021に選出

[9] TRIBUS「2021年度採択スタートアップのクリエ・ジャパンが、リコージャパンと協業し、ダイレクトメールとパーソナライズド動画を組み合わせたソリューションによるセミナー集客効果を実証しました。

[10] 第39回 全日本DM大賞「二次元コード読取率25%超! 究極のパーソナライズDM

[11] 株式会社WithMidwife「働く男性の悩み第1位は「子育て」!健康や子育てに関する相談サービスの実証実験をリコーグループにて実施

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KPIは掲げずモメンタムを維持し続ける

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この記事の著者

皆本 類(ミナモト ルイ)

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