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両利きの経営に必須となる「イノベーション・マネジメント・システム」とリード人材である「IMP」とは?

ISO56001発刊記念セミナーレポート【前編】

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ソニー・エリクソンでのイノベーション・マネジメントの実践

 続いて登壇したエリクソン氏からは、スマートオフィスサービス「Nimway」の開発過程が、イノベーション・マネジメントの実例として紹介された。

ヨハン・グルンドストロム・エリクソン
aiRikr Innovation AB創設者 ヨハン・グルンドストロム・エリクソン氏

 2008年、AppleがiPhoneを発表し、携帯電話市場が大きな転換期を迎える中、エリクソン氏はソニー・エリクソンで組織再編を主導した。事業環境の急速な変化に対応するため、Googleとの提携を通じてAndroidを導入し、新たな競争環境への適応を進めた。同時に、ISO9001(品質管理)、ISO14001(環境マネジメント)、ISO27001(情報セキュリティ)の認証取得を推進し、将来の5G標準化を見据えた基盤整備を行った。

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Nimway登場の前夜(5Gへのシフト):クリックすると拡大します

 次に2012年にソニーがソニー・エリクソンを完全子会社化すると、スマートフォン分野での統合戦略と、既存ノウハウを活用した新事業の確立が課題となった。この中で、すでに社内向けに開発されていたオープンアドレス・オフィスソリューションに着目。これが後に「Nimway」へと発展した。Nimwayは、同僚や会議室の位置を可視化し、オフィス環境での効率性を向上させるサービスとして市場導入された。

 同氏によれば、これらの取り組みを支えたのは、グローバル企業としての広範なネットワークとソフトウェア開発能力、そして、体系的なイノベーション・マネジメントだった。特に「つくり、はかり、まなぶ(build, measure, learn)」の反復的プロセスを実践することで、新たなサービスやソリューションの迅速な開発が可能になったという。このアプローチは、スタートアップのような柔軟性と迅速性、ユーザー中心の視点を組み合わせた革新的な取り組みだった。

 Nimwayチームは、世界初の「スマートオフィス」プロジェクトに取り組むなか、前例のない状況で、顧客ニーズに応じたソリューションを構想し、社内アセットを活用する体制を構築した。そして、当初のアイデアに顧客ニーズ、ソリューションのアイデア、社内アセットを丁寧に結び付け、事業をブラッシュアップしていった。手法としては、デザイン思考やビジネスモデルキャンバスを活用し、価値創造を反復的に検証するリーンプロセスを整備した。

 さらに、法務や製造などのコーポレート部門もバックアップ体制に組み込み、わずか9か月という短期間で最初の顧客を獲得するにいたった。この最初の顧客は56棟のビルを所有し、複雑なアセットを管理していた。まさにこのソリューションのモデル顧客といえよう。

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IMS(ISO56000)の導入:クリックすると拡大します

 しかし、導入当初にパンデミックによりオフィス需要が減少し、業績も一時停滞する。にもかかわらず、すでに事業開発を経験していたチームならではの迅速さと柔軟性で、あらたな顧客課題の解決が図られた。チームは自社オフィスをテストベッドとし、社会的距離の確保や座席予約のためのクラウドベースのスマートオフィスソリューションを開発。入館制限や距離通知などの機能を備えたこのシステムは国際的にも評価され、パンデミック対応型スマートオフィスのモデルとなった。

 その後も、Nimwayは迅速かつ柔軟な課題解決により顧客から支持を集め、成長し、インキュベーションプログラム段階を卒業した。現在はソニーネットワークコミュニケーションズ社の傘下に入りグローバルな事業展開を行っている。ヨーロッパでスタートした事業は、2022年には日本や米国を含む32カ国以上に拡大した。

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Nimwayのエコシステム:クリックすると拡大します

 現在Nimwayは、会議室や社員の状況や位置確認の機能だけでなく、APIを通じたセンサー連携により、建物の利用状況や環境データの可視化サービスを提供している。これらのデータは、今後の不動産業界においても競争力を支える重要なアセットとなるだろう。

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この記事の著者

雨宮 進(アメミヤ ススム)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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