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経営戦略としてのサプライチェーン変革

今こそサプライチェーンを経営戦略の中核に据える時──DXとCLOが日本企業の競争力を高める

第1回

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激変する日本のサプライチェーン

 サプライチェーンとは、原材料の調達から製造、物流、販売まで、一連の商品供給の流れ全体を指します。かつては「モノを運ぶ」という物理的な機能が中心でしたが、今日では企業の競争力と持続可能性を左右する、重要な経営基盤としての役割を担っています。デジタル化やグローバル化の進展により、企業は「いかに効率的にモノを運ぶか」だけでなく、「いかに柔軟で強靭なサプライチェーンを構築するか」という課題に向き合うことを迫られているのです。

 その背景には、日本企業のサプライチェーンを取り巻く環境が、かつてないほど複雑化していることがあります。最も大きな影響を及ぼしているのが、米中対立やウクライナ情勢、中東情勢の緊迫化など、連鎖的に高まる「地政学リスク」です。こうした中、多くの日本企業が事業環境のリスク増大を懸念しており、特に製造業では第三国・地域への機能移管を検討・実施する動きが加速しています。実際、半導体や電子部品などの重要物資は、ASEANやインドへの生産移管が進んでいます。

 一方、国内に目を向けても、物流業界は構造改革の必要性に直面しています。人材不足の中、高齢化が進むトラックドライバーの確保は年々難しくなっており、若手の採用も伸び悩んでいます。2024年4月からの改正労働基準法適用により、運送業界の需給ギャップは一層顕在化しました。特に中小企業への影響は深刻で、物流費の上昇が収益を圧迫し、既に一部の地域では配送の受託を制限する動きも出始めています。

 このような状況下で、日本の物流DX化の遅れも大きな課題となっています。多くの企業、特に中小企業では依然として紙の伝票や電話・FAXでの業務がメインとなっており、デジタル化による業務効率化が進んでいません。基幹システムの導入も遅れており、データに基づく効率的な業務運営ができていない企業が大半を占めています。

 さらに、サプライチェーン全体での環境負荷低減も急務となっています。気候変動対策の世界的な潮流の中、企業にはサプライチェーン全体でのCO2排出量の可視化と削減が求められています。しかし、多くの企業がデータ収集と排出量の算定方法に課題を抱えており、効果的な対策を打ち出せていないのが現状です。

 しかし、こうした複合的な課題は、新たなビジネスチャンスでもあります。物流業界では、デジタル技術を活用した業務効率化や、企業間での共同物流、環境負荷低減に向けたグリーン物流など、様々な革新的な取り組みが始まっています。政府も、物流DXの推進やAI・IoTを活用した物流効率化の実証実験を支援しており、業界全体での変革が本格化しています。

 サプライチェーンを取り巻く環境は厳しさを増していますが、それはすなわち、抜本的な改革に踏み出すための絶好の機会でもあります。デジタル化・脱炭素化・強靭化という3つの潮流は、既存の事業者だけでなく、新規参入企業にも大きな事業機会をもたらそうとしています。

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「2024年問題」が迫る変革

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この記事の著者

真畑 皓(マハタ ヒカル)

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