「サービス・デザイン」が今、なぜ注目されるのか?
今回ご紹介する書籍は、『これからのマーケティングに役立つ、サービス・デザイン入門 -商品開発・サービスに革新を巻き起こす、顧客目線のビジネス戦略』(J.Margus Klaar (著), 長谷川敦士 (監修), 郷司 陽子 (翻訳) / ビー・エヌ・エヌ新社)です。
他社に圧倒的な差をつけ、自社や自身を選択してもらう。多くのビジネスパーソンにとってもなかなか実現しないけれど、一度はそんな環境を自身の手でデザインし、そのダイナミックな状況を経験したいのでは無いでしょうか。
本書冒頭で、「サービス・デザイン」の定義、その目的、重要性を語っています。
サービス・デザインとは、ビジネスを顧客の視点から体系的に編成する取り組みです。そしてその目的は、企業と顧客のインタラクションのあらゆる局面において、快適なカスタマー・エクスペリエンス(顧客経験価値:商品やサービスを購入したり使用したりする経験によって得られる感覚的、感情的な付加価値)を提供することにあります。
「サービス・デザイン」という言葉を初めて聞いた方には少しわかりにくいかもしれません。しかし、なぜ「サービス・デザイン」が重要なのかを語っている部分は多くのビジネスパーソンに共感を得られるものかと思います。
本書では、サービス・デザインが目的とする「カスタマー・エクスペリエンスの向上」の重要性が、ここ数年で特に注目されるようになった背景を説明します。
インターネットの普及とテクノロジーの進歩により、顧客同士が商品やサービスへの評価を、顧客自身のフィールド(SNSや自身のブログなど)で行うようになり、マーケッターが商品やサービスの評価をコントロールできる時代ではないこと。そして、現代のプロダクトやサービスは、「購入の瞬間」だけが顧客接点なのではなく、購入前後、ものによっては非常に長期に渡る使用体験そのものが、カスタマー・エクスペリエンスなのだと語ります。
「商品単体の品質」だけでは多くのビジネスが差別化できない状況で、特に製造業や消費財のメーカー、それ以外の多くの業態の企業にとって、競争優位の源泉がカスタマー・エクスペリエンスにあり、その全体を設計するのが、まさに「サービス・デザイン」だということです。
次項では、本書の中核的な思考に触れる前に、まだすっきりしない読者のために、“そもそも”の部分を整理しましょう。