なぜ優秀層が「キャリア迷子」になるのか
栗原:キャリアのトレンドについても伺います。未経験でコンサル業界への転職を目指すのは、どういう層が中心になるのでしょうか。
横山:以前はコンサルファームといえば「Up or Out(昇進するか、さもなくば退職するか)」というハードな世界で、より高い年収を得たいとか実力をつけたいという人が目指していたように思います。それが最近は、「安定のためにコンサルファームで学びたい」という動機の方が増えてきています。「大企業に行けば一生安泰」という常識が崩れ、何かあった時に自分の身を自分で守れるようにしておきたい、ということからコンサルなどのプロフェッショナルを目指す人が増えてきていますね。

新卒でデロイトトーマツコンサルティングに入社。中期経営戦略の策定やM&A実行支援、新規事業立案・立ち上げ支援に従事。その後、リクルートライフスタイルにおける事業開発/推進を経て、フリーコンサル紹介事業を行う株式会社Flow Group、コンサル転職支援事業を行うFlowXを創業。どちらも代表取締役を中野氏とともに務める。
栗原:まずはコンサルでスキルを身に付ければ、潰しが効くということでしょうか。
横山:はい。「大手商社で3年経験しました」と言っても配属される部署によって身につくスキルも変わってくるので、具体的なスキルがすぐにイメージされません。しかしコンサルであれば「あそこのファームにいたなら、こんなスキルがあるよね」というのが、他の業種と比べてもイメージしやすい。だから転職や独立もしやすいんですよね。
中野:注意が必要なのは、「潰しが効く」といっても年齢によるということです。スキルを身に付けていずれは別の業界へ行きたいということなら、遅くとも30代前半までにはコンサルタントになることを推奨します。
コンサルタントとして成功したいのか、その後に事業会社に戻って何かをやりたいのか。目的を明確にして戦略を立てる必要があります。漠然とコンサルをやればキャリアの幅が広がるんじゃないかという考え方だと、「キャリア迷子」になってしまう可能性が高いのです。
仕事か年収か、コンサル経験者の次の一手
栗原:コンサル経験者の次のキャリアとしては、どのようなパターンが考えられますか。
中野:コンサル業界を渡り歩いてキャリアを積んでいかれる方が一番多いと思います。それ以外では多い順に、30代中盤くらいで事業会社に転職する人、30代前半くらいまでにスタートアップやもう少し小さい規模の企業に行く人、そしてファンドのような金融周辺のレバレッジがかかる領域に行く人がいらっしゃいますね。
栗原:ファンドへの転職が一番少ないんですね。
中野:採用人数もかなり少ないですからね。コンサルティング業界でトップティアまで上り詰めてからファンドへ、という方が割と多いように思います。
栗原:仕事内容か年収かなど、重視する項目によってもキャリア戦略が変わりますね。
中野:そうですね。年収を上げるには、事業会社に行くよりもコンサル業界でキャリアアップするほうが確実でしょう。ただ、上のポストが詰まってきているという現状もあって「どう年収を上げていけばいいんだろう」と悩んでいる人も増えています。そこで、ブティックファームに転職し、お客さんへのフィーは変わらないものの自分の取り分を増やすとか、株式の一部をもらって一緒にファームを大きくしていくとか、そういった年収の上げ方もあります。
栗原:コンサルへの転職を考える場合に、意識すべきことはありますか。
中野:最終的に何がやりたいかによって、選ぶべきファームは違うでしょうね。専門領域特化のコンサルになりたいのであれば、大手ファームの専門チームに行って極めたほうが良いですが、あくまで専門領域のコンサルタントとしてのキャリアになるので、そこからプロ経営者になるのは難しいですよね。