既存ビジネスモデルからの転換がミッション実現の近道
「Fibee」は、「ミツカンにとって大きな挑戦だ」と林氏は断言する。それは、既存の事業構造とは根本的に異なるからだ。
第一のポイントは、トライ&エラー型の事業であること。220年あまりにわたり、調味料を安定的に作り続けてきたミツカンにとって、需要を計算し尽くした上で、大量ロットで市場へ投入し、不特定多数に向けて大々的にCMを展開するのが当たり前だった。しかし、「多様性の渦に突如放り込まれた」と林氏が表現するように、「Fibee」では、特定のファン層とのつながりを持ちつつ、失敗を前提に小さな試行錯誤を繰り返す事業運営へと舵を切った。
同時に「Fibee」は、売り切り型ではないビジネスモデルへのチャレンジでもある。顧客と直接的な関係を築き、続けて購入してもらう。継続利用によって効果が実感されやすくなる点でも、ミツカンの目指す「健康実現」に近づくと、林氏は期待を寄せる。

顧客との“つながり”からヒット商品を生み出す、Fibeeの未来構想
「Fibee腸内会」の目標について、髙木氏に問われた林氏は、「“濃い味”のUGCを集めること」と回答した。「おいしそう」「私の推しが食べている」「今キャンペーンをやっているらしい」といった“薄味”のUGCも歓迎するが、より重視するのは、「すごくおいしかった」「おすすめしたい」といった、実体験と感動をともなう“濃い味”のUGCだ。
そのような投稿がマーケット全体に広がっていけば、ブランドに大きなインパクトをもたらす。「企業が大声を出しても、もはや聞いてもらえない」時代だからこそ、CM等広告によるコミュニケーションの依存度を下げ、よりUGCを通じたコミュニケーションへと、切り替えていきたいのだという。
これを受けて髙木氏は、「一方的に情報を見せられて買わされるのではなく、ハッピーをシェアしてもらったことで購買につながる世界観は素敵だ」とコメント。林氏は、「単なるきれいごとというわけでもなく、実際の調査でも、CMよりUGCに触れた時の方が説得力を感じるという結果が出ている」と付け加えつつ、「顧客との“つながり”から得たアイデアをもとに、数々のヒット商品を生み出していければ」と期待を込めてセッションを締め括った。

