顧客が“自ら集う場所”を作る。ファンコミュニティ「Fibee腸内会」の狙い
ミツカンが顧客との“つながり”強化で重視したのは、顧客が“自ら集う場所”、すなわち“再来訪するエンタメ価値がある自社接点”の構築だ。一方的な情報発信がメインだったSNSは、対話型・参加型で楽しめるアカウントに進化。Webサイトでは仲間と一緒に楽しめるコミュニティを設け、D2Cでは定期購買特典などにより習慣化を促進した。また、博物館ではアプリを活用し、離れていても持続的に楽しめる仕組みを整備している。これらのトラフィックは統合IDで管理し、顧客行動データの分析基盤として活用しているという。
とりわけ新ブランドの「Fibee」では、この戦略を最前線で推進している。代表的な施策が、ファンコミュニティ「Fibee腸内会」の立ち上げだ。
この取り組みは、Asobicaが提供する、ノーコード型データプラットフォーム「coorum」が土台となっている。髙木氏によれば、その最大の特長は「“本音データ”の蓄積」にある。従来、企業は広告閲覧や来店、購買など、顧客の行動は可視化できても、「なぜその行動に至ったか」という心理的要因や感情までを把握するのは難しかった。「coorum」は、コミュニティ内で交わされる自然な対話を通じて、顧客の隠れた“本音”をデータ化し、商品企画や販促への示唆として活用できるようにしている。
顧客と「事業をともに創る仲間」の関係を築く
「Fibee腸内会」は、具体的にどのように運営されているのか。髙木氏はいくつかの実践を紹介した。
まずは、オウンドメディア「ラクさんの豆知識」だ。「Fibee」に関する開発秘話やレシピ、クイズなど、商品の背景やストーリーを掘り下げた記事を毎週配信し、顧客の関心を継続的に喚起している。また、「Fibee」に限らず腸活そのものの習慣化を支援するため、「腸活ダイアリー」という個人記録の機能も実装した。
コミュニティ形成の観点で重要な役割を果たしているのは、SNS機能「みんなのおやつ・ごはんフォト」だ。「Fibee」を中心に、腸活や健康を意識した食事の写真をシェアでき、コメントや「いいね」を通じて交流が生まれる。これにより、一人で地道に取り組むイメージがある腸活を、仲間同士で盛り上がる活動へと転換させた。髙木氏によれば、企業にとってもこの取り組みは、アドホックな調査では得られない日常データを収集し、商品が生活にどのように組み込まれているかを把握できるのがメリットだという。
さらに隔月でオンライン・オフラインの交流会も実施。顧客からコミュニティ運営に関するフィードバックや販促企画のアイデア、新商品の感想などを共有する機会を設けている。髙木氏は「企業と顧客というよりも、『Fibee』という事業をともに創る仲間の関係性が築かれている」と表現する。
髙木氏は続けて、コミュニケーションと盛り上がりの文化基盤を構築した先のフェーズでは、良質なUGCの創出と、その外部発信・拡散を目指しており、それが最終的にはLTVの向上に寄与するのだと述べた。

