原価のブラックボックスを解消した方法
服部:まず、製造子会社にプロジェクトの必要性と目指したい姿を共有し、親会社のデータもガラス張りにすることで、グループ一体のプロジェクトを構築、開始しました。販売量に製造子会社のSKU単位の原価データをつなげる仕組みを作ることで、親会社側でも「原料費」「加工費(労務費・設備費)」といった詳細なコスト構造が見えるようになりました。
池側:大掛かりなデータの統合ですね。
服部:これを実現したことで、売上から売上総利益までの差異分析の解像度を上げることができました。利益率低下の要因を、「仕入価格上昇」で済ませず、「販売単価・数量の変動」「原材料費高騰」「製造固定費の単価差」といった要素に分解して説明できるようになりました。
池側:現場の意思決定にどう活かされていますか。
服部:毎月の会議で「構造把握」につなげています。具体的には、ブランド担当者と実績や見込における前年や前回見込との差異構造や視覚化された単価データなどを共有することや、実績だけでなく将来起こる原価構造を把握してもらうことなどを行っています。そのことで、最適な販売戦略といった打ち手の検討を、マーケティング部門とともに確認できるようになりました。

FP&Aは「分析屋」から「意思決定の支援者」へ
池側:FP&Aが仕組み作りをリードする。さらに、仕組みを作って終わりではなく、アクションにつなげている点が素晴らしいですね。
服部:FP&Aの役割は分析だけでなく、意思決定支援ができればと考えています。具体的な一例として「製品単価最適化シミュレーションシート」を作成し、パラメーター入力で利益インパクトがわかるようにすることで、担当者が自律的に「最適な製品価格」を判断できるようなサポートをしています。
池側:営業部門への働きかけはいかがですか。
服部:営業部門へも勉強会を実施しています。自分たちの活動がP/Lのどこに効くのか、コスト構造を共有することで「なぜ値上げが必要か」「製品価値向上の重要性」を腹落ちしてもらう活動を続けています。
水谷:服部の取り組みは、冒頭に申し上げた「FP&Aが神経細胞のように張り巡らされた状態」の好例です。本社が「ROICを上げろ」と言うだけでは現場は動きません。現場の言葉とデータで「どうすれば良くなるか」を一緒に考える存在が必要です。
池側:国内事業のバリューチェーン全組織が、同じデータ基盤で一体となって取り組む「ありたい姿」に近づいていますね。
服部:マーケティング、R&D、購買、製造、営業、SCMといった各バリューチェーン担当者が同じデータを見て議論し最適なアクションが打てるよう、これからも仕組作りを検討・構築していきたいと思います。また、FP&Aとして事業メンバーが抱える採算構造課題の打ち手を実行し、成果に結びつけたいと考えています。
